平成24年度 税制改正に関する提言
財団法人全国法人会総連合
はじめに
 本年311日に発生した千年に一度といわれる東日本大震災は、巨大津波と原発事故を伴い広範囲に未曾有の被害をもたらした。日本経済はリーマン・ショック後の大底から本格的回復軌道に乗る矢先だっただけに、その影響は計り知れない。このため、震災復興は国民挙げての被災地支援であると同時に経済再生に欠くことのできない国家課題となった。日本人の心に深く刻まれた「311」への対応を誤れば、間違いなく歴史に大きな汚点を残すであろう。
 これまでの復旧・復興過程をみると、寸断されたサプライチェーン(供給体制)の回復で示されたような民間の対応スピードに比べ、本格的復興予算の編成などにみられる行政の対応はあまりに鈍く遅いと言わざるを得ない。その原因はひとえに政治の混乱に根ざしていると指摘されており、政治機能の回復は一刻の猶予も許されない状況にある。
 一方、わが国は先進国で最速のスピードで進む少子高齢化と、これも先進国で突出して悪化した財政の健全化という構造問題に直面している。この二つの問題は密接につながっており、政府も社会保障と税の一体改革についての成案をまとめた。しかし、実行に向けた明確な担保と道筋が示されたとは言いがたい。
 国民の不安を払拭する社会保障制度の構築は消費と投資を促す成長政策の意味合いも持つ。財政健全化にも同じことが言える。ギリシャの財政危機に端を発したソブリンリスク(政府債務への不信)が米欧に広がっていることを考えれば、破綻寸前にあるわが国財政の再建はまさに待ったなしである。
 中小企業を取り巻く環境も大震災、原発事故を機に一段と厳しさを増している。地域経済と雇用の担い手である中小企業の活性化なしに日本経済の再生はあり得ず、その対策は極めて重要である。
 本提言はこうした危機感の下にまとめたものである。
基本的な課題
T 東日本大震災からの復興に向けて

 今回の大震災の特徴は、巨大津波が東北3県を中心に500キロメートルに及ぶ沿岸部の街を根こそぎ飲み込んで生活を奪い、2万人を超す死者、行方不明者を出したことにある。加えて原発事故による放射能汚染が広範囲に及び、風評被害も重なって農水産・畜産物に大打撃を与えた。その痛みは全国民が等しく共有するところである。
 一方で、中小企業を含めたサプライチェーンの寸断が世界のものづくりに影響したように、日本の高度で複雑な部品が大きな底力をもっていることも再認識させた。一刻も早く復旧、復興に道筋をつけることは、被災地域の生活再建だけでなく日本経済の再生にもつながるといえる。そのためには、復興構想会議の提言にもある通り、新たな街づくりから規制緩和までを多角的にスピード感をもって進める必要がある。
 復興財源については、今を共に生きる我々が、我々の責任において負担することを大前提とすべきである。まず不要不急の歳出の見直しと無駄の削減を徹底的に実施し、それでも不足する場合には臨時的な増税もやむを得ないものと考える。
 震災特例法の施行等により、すでに被災地の復旧、復興のため多岐にわたる税制上の支援が実施されているが、引き続き被災地企業(これと取引のある者も含む)に適切な措置を講じるよう求める。

1 復興財源について
 (1)増税を実施する場合の期間
    復興債の償還財源として臨時増税措置を採る場合は、国民の理解を得た上で復興後の経済に
   重荷にならないよう短期とすべきであり、政府の復興基本方針が想定しているような期間(5〜
   10年)では長すぎると考える。また、増税開始時期も、極力、景気に悪影響を及ぼさないよう
   配慮する必要がある。
 (2)増税税目についての留意点
    所得税、法人税の増税は、国内産業の空洞化や雇用、消費に悪影響を及ぼす恐れがあること
   から問題がある。税収の規模と安定性、さらに景気に対する中立性等の観点から、消費税が最も
   適していると考える。
    その場合、被災者も同等に消費税を負担することになるが、何らかの配慮的措置を講じる等
   して、その理解を得ることが必要である。
2 震災復興に向けた各種支援の拡充
 (1)被災地企業の法人税を一定期間、減免
    被災地域からの企業の移転、流出の防止や他地域からの企業誘致の促進、雇用の確保などの
   観点から、被災地域の企業の法人税を一定期間、減免する等の措置が必要である。
 (2)固定資産税の弾力的運用
    固定資産税について、被災実態を十分に考慮した評価額の改定・適用と、課税の減免措置
   拡充を求める。
 (3)特区の創設
    被災地域の復興をはかるため、土地利用など各種の規制を緩和するとともに、税制・財政等
   の支援を行う「特区」を創設すべきである。
U 社会保障と税の一体改革 
 わが国の少子高齢化は先進国で最速のスピードで進んでおり、持続可能な社会保障制度の構築は喫緊、かつ最大の課題である。すでに「給付」と「負担」の間に大きなギャップが生じており、それが先進国の中でも突出した財政悪化となって反映されている。しかも、「団塊の世代」が年金受給開始年齢に達するなど、そのギャップは急速に拡大しようとしている。このままでは社会保障制度も財政も持続困難になるのは明白と言えよう。
 これらは国民に将来不安をもたらしており、生産年齢人口の減少と人口全体の減少による市場規模の縮小懸念も相まって、成長の大きな下押し圧力になる恐れが指摘されている。そういう意味でも、「安心」を与える持続可能な社会保障制度の構築と財政健全化の両立は、消費や投資を促し活力ある経済社会づくりにつながると考える。
 政府が「社会保障と税の一体改革」案をまとめたのを機に、社会保障制度と財政健全化に対し改めて以下のことを求めておきたい。
1 社会保障制度に対する基本的考え方
 わが国の社会保障制度は先進国の中では「中福祉」に位置し、国民負担率は米国に次ぐ「低負担」である。この「給付」と「負担」をバランスさせるには、既存の給付のあり方を見直すとともに、負担についても「中負担」にする必要があり、その財源は安定的でなければならない。安定財源確保にあたっては「保険料負担と税負担のあり方」や「世代間・世代内の公平」などを考慮する必要がある。そうした国民的合意がなければ、将来にわたり持続可能な社会保障制度の確立はできないからである。
 (1)財政赤字を加えた潜在的国民負担率は、将来にわたり50%程度にとどめるべきである。そのため
  には「自助」と「公助」の役割分担や、給付の効率化も極めて重要になる。
 (2)社会保障の安定財源としては、政府の一体改革案が示したように消費一般に広く公平に負担を
  求め、かつ税収が景気に左右されにくい消費税が適しており、その税率の段階的引き上げはやむを
  得ないと考える。
   国民に負担増を求めるためには、行財政改革のさらなる徹底や、景気への十分な配慮がされるなど
  国民各層の合意を得るための努力が必要であることは言うまでもない。
 (3)企業への過度な保険料負担を抑え、経済成長を阻害しないような社会保障制度の確立が求められる。
2 財政健全化に向けて
 指摘したように、財政の健全化は持続可能な社会保障制度の構築と両立させねばならない重要な課題である。国と地方の長期債務残高は国内総生産(GDP)比で18倍と、市場でソブリンリスクが問われている米国やイタリアなどよりはるかに悪化している。にもかかわらず、現在の財政健全化目標でさえ、これら先進国よりスピードが遅く厳しさに欠けている。
 成長戦略の実施とともに、聖域なき歳出の改革と社会保障と税の一体改革案で示された消費税の段階的引き上げなどの歳入改革を同時に実施しない限り、破綻は避けられないとの危機感が求められる。
 (1)政府の財政運営戦略にある−(カ国・地方の基礎的財政収支赤字の対GDP比を2015年度半減、
  20年度
黒字化A債務残高対GDP比を21年度から引き下げ−という健全化目標を着実に達成
  すべきである。
 (2)国債の利払い費だけでも年間10兆円に達するわが国の財政は金利上昇に脆弱な体質となっており、
  国債の信認確保は極めて重要である。現在の長期金利が低いのは国債が国内消化されているとの
  側面だけでなく、日本には十分な増税余地があるためと市場が見ている点に留意が必要である。
3 行財政改革の徹底
 厳しい経済状況にあるにも関わらず、震災復興と社会保障制度の財源確保のためには増税やむなしとの考え方を示した。それは、国・地方におけるぎりぎりまでの行財政改革が行われることを前提としている。
 しかしながら、改革の取組みは極めて不十分であり、国民は改革の先送りをもはや許さないことは明らかである。国会・地方議会は国民に痛みを求める前に「まず随より始めよ」との認識の下、自ら身を削る覚悟を明確に示すことが出発点となろう。
 直ちに、以下の諸施策について期限を定めて改革を断行するよう求める。
 (1)国・地方における議員定数の削減、歳費の抑制
 (2)国・地方公務員の人員削減、人件費の抑制
 (3)特別会計と独立行政法人の見直しによる無駄の削減
 (4)民間活力を阻害する各種規制は大胆に改廃し、民間にできることは民間に任せ成長につなげる
4 税制の抜本改革のあり方
 わが国の税制は先の抜本改革から20年以上が経過した。この間に少子高齢化や人口減少社会、グローバル競争とそれがもたらす所得格差など、経済社会の大きな構造変化が急進展し、新たな抜本改革が不可欠となった。改革に当たっては所得、消費、資産の課税バランスを図ると同時に、国際間の経済取引の増大や多様化の観点、諸外国の租税政策等との国際的整合性、成長と雇用を創出するという視点等を踏まえることが重要であり、特に後述する法人税の改革は喫緊の課題と考える。
5 共通番号制度の早期導入
 共通番号は、電子商取引の普及や金融商品の多様化、国際化が進む中、資産の移動把握、金融所得の一体課税における損益通算の適正執行、医療や年金など社会保障制度における個人情報などを一元管理する上で、極めて有効な制度と考える。それは行政サービスの効率化だけでなく、サービスを享受する国民にとっても大きなメリットがある。
 以下の点を踏まえた上で、共通番号制度の早期導入に向け、積極的な検討を進めるよう求める。
 (1)制度の創設、維持にかかるコストの明確化
 (2)税務情報などプライバシー保護のための法整備
 (3)税務面のみならず社会保障分野にも活用するなど、納税者の利便向上に配慮
V 経済活性化と中小企業対策
 平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」では、「2020年には名目成長率3%、実質成長率2%を上回る成長、2011年度中には消費者物価上昇率をプラスに転じ、早期に失業率を3%台に低下させる」との目標を掲げているが、具体的政策の実効性には懸念も生じており、目標到達に対する不透明感が拭いきれない。
 また、東日本大震災で寸断されたサプライチェーンは急回復しつつあるものの、原発事故による電力不足が将来にわたって続く懸念から生産の海外移転が加速する可能性も指摘されており、わが国の経済活動に大きな制約をもたらしている。
 成長戦略に盛り込まれた医療や農業など新たな成長分野育成に大胆な規制緩和を実施すると同時に、企業が将来に向かって活力を維持し、雇用確保などの社会的責任を果たすことができるよう税制環境を整備する必要がある。
1 法人税率の引き下げ
 アジア、欧州各国では、近年、国際競争力の強化や外国資本の誘致などを図るため、法人税率の引き下げが行われており、わが国との税率較差が拡大している。
 また、法人税に社会保険料を加えた企業負担の国際比較では、わが国は必ずしも高くないとの指摘もあるが、年々、社会保険料が引き上げられていく状況を加味すると、企業の負担感は高まっている。こうした状況が続けば、国内企業の海外移転が促進され、雇用への悪影響、さらには経済全体の衰退につながる恐れがある。
 こうした観点から、法人の税負担は地方税を含めて大幅に軽減すべきである。
 (1)平成23年度税制改正法案に盛り込まれた法人実効税率5%引き下げは法案通りの成立を求める。
 (2)法人税率のさらなる引き下げにより、早期に欧州、アジア主要国並みの30%以下の実効税率と
   するよう求める。
 (3)法人税における租税特別措置については、課税ベースの拡大により公平な課税を確保すべきである
   との観点から、本来、時限的な措置でありながら、長期にわたり存続している措置は検証を行う
   必要がある。その上で、政策目的を達した措置は廃止し税率の引き下げに向けるべきである。
 (4)中小企業の軽減税率の恒久化と適用所得金額の引き上げ
    中小企業の担税力を踏まえると、中小法人に適用される軽減税率18%を引き下げ、さらに時限
   措置ではなく、これを恒久化するよう求める。
    また、昭和56年以来、800万円以下に据え置かれている軽減税率の適用所得金額を、少なく
   とも1,600万円程度に引き上げるよう求める。
2 事業承継税制の拡充
 わが国の企業の大宗を占める中小企業は、地域経済の活性化、雇用の確保などに大きく貢献しており、経済の根幹を支える重要な存在である。その中小企業が相続税の負担等により事業が承継できなくなることは、日本経済に大きな損失を与えるものである。
 平成21年度税制改正で創設された相続税、贈与税の納税猶予制度は、その適用要件が厳しく設定され、積極的な利用が困難との声が多い。
 中小企業の円滑な事業承継を図る観点から、中小企業の実情、実態に即した税制の構築が必要である。
 (1)相続税、贈与税の納税猶予制度について要件緩和と充実
  @適用申請時と適用後に求められる煩雑な各種手続きの簡素化
  A5年間の雇用8割維持の要件緩和(今回の震災など不測の事態が生じた場合を含む)
  B対象会社の拡大
  C制度適用の株式総数の上限(3分の2)の撤廃
  D死亡時まで株式を所有しないと猶予税額が免除されない制度
 (2)親族外への事業承継に対する措置の創設
   親族外承継も重要な課題であり、円滑な承継を支援するとの観点から、所要の措置を講じる必要が
  ある。
 (3)事業用資産を一般資産と切り離した本格的な事業承継税制の創設
   欧州主要国では相続税体系は多様ながら、事業承継税制を優先させるとの考え方は一致しており、
  各種特例や優遇措置が整備されている。
   平成21年度税制改正で創設されたわが国の納税猶予制度は、こうした欧州主要国の税制と比較
  して、内容、要件などが不十分である。
   わが国においても、「事業用資産を一般資産と区分し、事業用資産の課税を軽減あるいは免除する」
  本格的な事業承継税制の創設を求める。
3 中小企業の活性化に資する税制措置
 中小企業は、わが国経済の礎であり、また、地域経済の担い手である。その中小企業が時代や環境の変化、特にグローバル化の流れの中で、その存在を確保し、社会経済への貢献を続けることができるような税制の確立が求められる。
 (1)中小企業の技術革新など経済活性化に資する以下の措置は本則化するよう求める。
   @中小企業投資促進税制
   A中小企業等基盤強化税制
   B少額減価償却資産の即時償却
 (2)交際費課税の見直し
    交際費は、本来、企業経営における必要性から支出されるものであり、経費性、損金性が認めら
   れるものである。交際費課税が租税特別措置法で創設された昭和29年当時とは、わが国の時代背景
   も大きく変化しており、その政策目的は既に形骸化しているものと判断される。平成21年度税制
   改正において、中小法人に対する交際費の定額限度額が400万円から600万円に引き上げられ
   たが、企業の消費を促し、景気回復に役立てるとの観点からも、以下の見直しを求める。
   @定額限度額のさらなる引き上げ
   A損金不算入割合10%の撤廃
   B資本金規模に関わらず一定の損金算入を認める
 (3)役員給与の損金算入の拡充
   @役員給与は原則損金算入とすべき
     現行税制では、役員給与の損金算入の取り扱いが限定されており、特に報酬等の改定には厳しい
    制約が課せられている。役員給与は、本来、職務執行の対価であり、原則損金算入できるよう
    見直すべきである。
   A同族会社も利益連動給与の損金算入を認めるべき
     経営者の経営意欲を高め、企業活力を与える観点から、同族会社における役員の利益連動給与
    についても、一定要件のもと、損金処理を認めるべきである。
W 国と地方のあり方
 わが国の中央集権的システムはすでに経済社会の現状に適合しなくなっており、行財政面の非効率化のみならず、地域経済の活性化をも阻害するに至っている。そういう意味で地方分権は必然的流れであるが、その際にはまず国と地方の役割分担を明確化し、税財政や行政のあり方を考えねばならない。
 国と地方は行政を担う「車の両輪」であり、一方だけに負担を偏らせることがあってはならない。国の財政が地方よりはるかに悪化している現状を考えれば、いかに地方が国依存から脱却し、自立・自助の体質を構築するかが重要である。それが地域活性化、さらにはわが国経済社会に活力を与えることにつながると考える。
 (1)広域行政による効率化の観点から道州制の導入について検討すべき。
 (2)基礎自治体(人口30万人程度)の拡充を図るため、さらなる市町村合併を推進すると共に、
   議員定数削減や行政のスリム化などの合併メリットを追求する必要がある。
 (3)地方公務員給与は、国家公務員給与と比べたラスパイレス指数が是正されつつあるものの、
   手当てなどを含めると依然としてその水準は高く、適正水準への是正が必要。
 (4)地方議会は、大胆にスリム化するとともに、より納税者の視点に立って行政に対するチェック
   機能を果たすべき。
 (5)地方の自立・自助を推進する観点から地方交付税を中心とした三位一体改革をさらに進めると
   同時に、適正な課税自主権を発揮すべき。
X その他
1 環境問題に対する税制上の対応
 平成23年度税制改正で石油石炭税に上乗せ税率を課す「地球温暖化対策のための課税の特例」が盛り込まれたが、法案は棚上げ状況にある。
 環境問題にかかる税制上の対応については、国内外における議論の動向、地球温暖化をはじめとする環境政策等の重要性、石油税や揮発油税など既存の税制措置との調整をはかりつつ、国・地方の役割等、幅広い観点で、白紙からの再検討を行うべきである。
2 納税環境の整備
 行財政改革の推進と納税者の利便性向上、事務負担の軽減をはかるため、国税と課税基準を同じくする法人事業税、法人・個人の道府県民税、市町村民税の申告納税手続きにつき、地方消費税の執行と同様に、一層の合理化を図るよう求める。
3 租税教育の充実
 税は国や地方が国民に供与する公共サービスの対価であり、国民全体で等しく負担する義務がある。また、税をきちんと払い、税の使途についても厳しく監視する必要がある。しかしながら、税の意義や、税が果たす役割を必ずしも国民が十分に理解しているとは言えない。このため、学校教育はもとより、社会全体で租税教育に取り組み、納税意識の高揚を図っていくことが必要である。
 法人会においては、学童などを対象とした租税教育活動として、青年部会による「全国一斉行動」や女性部会の「税に関する絵はがきコンクール」などを実施しており、今後もさらに積極的に取り組むこととしている。
1.所得税関係
1)所得税のあり方
 @基幹税としての財源調達機能を回復すべき
   所得税は国民がその所得に応じて負担するという税の基幹とも言うべき税目であるが、各種控除の
  拡大などにより空洞化が指摘されて久しい。
   また、グローバル競争や就業形態の多様化などの経済社会の構造変化などから、非納税者が増加
  する傾向もある。基幹税としての財源調達機能を回復するためにも、所得税・住民税は広く国民全体
  で負担していくものとすべきである。
 A個人住民税の均等割は、応益負担原則の観点から適正水準とすべき。
2)各種控除制度の整理・統合
  平成23年度税制改正では、所得再分配機能強化の観点から、成年扶養控除、給与所得控除の上限設定
 など、増税方向での改正が予定されたが、本法案は未成立の状況である。
  各種控除は、社会構造の変化に対応した合理的なものとすべきであり、まずは、23年度改正案を白紙
 に戻し、累次の改正で複雑化している諸控除の整理・合理化を図るとの観点から見直しを優先すべきで
 ある。
3)少子化対策
  少子化対策は、保育所の充実など、本来的には財政・行政面で総合的な施策を講じることが肝要で
 あり、その一環として税制の果たす役割も大きい。子どもが多くなれば世帯の税負担が軽減されるよ
 うな税額控除制度の創設や、フランス等で実施されているNN乗方式の導入なども検討課題であろう。
4)金融所得一体課税
  所得税制は、現行の10種類に区分した所得類型を統合、簡素化することが望ましい。平成20年度
 税制改正における金融所得に対する損益通算の特例は、その第一歩と考えられるものの、小幅な改正
 で十分ではない。
  経済の活性化の観点からも幅広い金融商品を対象にした金融一体課税の制度拡充を求める。
2.法人税関係
1)同族会社の留保金課税制度の廃止
  同族会社の留保金課税は、平成19年度税制改正で出資金1億円以下の会社がその適用対象から除外
 され、中小企業における同族会社の留保金課税は実質的に撤廃されたが、課税制度そのものは未だ存続
 している。
  個人所得税とのバランスを図るために設けられた本制度の意義は既に失われており、廃止を求める。
2)「中小企業者に対する法人税率の特例」の適用範囲見直しは行うべきではない。
  平成23年度税制改正大綱において検討事項とされた中小企業者に対する法人税率の特例(軽減税率)
 と租税特別措置の適用範囲の見直しについては、中小企業の活力増大と成長の促進に資するとの観点
 から、見直しは行うべきではないと考える。
3.相続税・贈与税関係
1)相続税の課税強化は行うべきではない
  平成23年度税制改正では、格差是正の観点から、相続税の基礎控除額の引き下げ、最高税率の引き
 上げが盛り込まれたが、法案未成立のまま棚上げの状況にある。国際的にみても、わが国の相続税の
 租税負担率は主要各国とほぼ同一水準にあり、その課税強化は容認し得ない。
2)贈与税は経済の活性化に資するよう見直すべき
 @贈与税の税率構造、基礎控除の見直し
   平成23年度税制改正で直系卑属と一般に分けた税率構造の見直しが行われることとなっていたが、
  法案は未成立の状況にある。
   個人資産の世代間移転を促進する観点からの改正であるが、その内容は限定的であり、税率構造や
  基礎控除の見直しなど贈与税のあり方まで踏み込んだ見直しが必要である。
 A相続時精算課税制度の拡充
   資産の世代間移転とその有効活用による経済の活性化に加え、事業承継にも資するとの観点から、
  平成23年度税制改正で受贈者に孫を加えること、贈与者の年齢を60歳以上に引き下げるなど、適用
  要件の見直しが行われたが、法案は未成立の状況にある。
   早期の法案成立を図るとともに、特別控除額を2,500万円から引き上げるなど、さらなる制度
  の拡充を求める。
4 消費税関係
1)わが国の危機的な財政状況を考慮すると、消費税率の引き上げはやむを得ないが、行財政改革の徹底
  、歳出入の見直しが前提であり、かつその実施時期は景気への配慮が必要である。
2)消費税を社会保障目的税とすることは慎重であるべき
   消費税を社会保障目的税とすることについては、税収の使途を特定の支出に限定することとなり、
  財政の硬直化を招く恐れがあり慎重に考えるべきである。
   しかしながら、現在、消費税の税収が実質的に年金など社会保障財源に充てられていることを考慮
  する必要がある。今後、消費税率を引き上げる際には、社会保障支出と負担の関連を明確にして国民
  の理解を得るべきである。
3)当面は単一税率が望ましい
  消費税の税率は、事業者の事務負担、税制の簡素化、税務執行コストおよび税収確保などの観点から、
 基本的には単一税率が望ましい。
  なお、インボイス導入の議論については、単一税率であれば、現行の「請求書等保存方式」で十分
 対応できるものと考える。
4)消費税の滞納防止
  租税全体の滞納に占める消費税の割合は依然として高く、国民に消費税に対する不信感を与える一因
 ともなっている。本来、消費税は預り金的な性格を有する税であることから、その滞納発生の未然防止
 として、制度、執行面においてさらなる対策を講じる必要がある。
5 地方税関係
1)固定資産税の抜本的見直しを求める
  固定資産税に対しては、長期的な地価の下落にも関わらず負担感が高いとの声が多い。評価方法
 および課税方式の抜本的見直しを求める。
  @宅地の評価は「収益還元価格」で評価すべき
  A居住用家屋の評価は経過年数に応じた評価方法に見直すべき
  B納税事務の負担軽減に鑑み、償却資産の評価は法人税の減価償却制度と連動した制度とすべき
  C国土交通省、総務省、国税庁がそれぞれの目的に応じて土地の評価を行っているが、行政の効率
   化の観点から評価体制を一元化すべき
2)事業所税は二重課税であり、廃止を求める
  平成15年度税制改正において新増設分に対して課せられる事業所税は廃止されたが、「事業に
 かかる事業所税」は存続している。市町村合併の進行により課税主体が拡大するケースも目立つ。
 事業所税は固定資産税と二重課税的な性格を有することから廃止を求める。
3)市町村民税の超過課税は課税の公平を欠くため解消すべきである
  地方税における市町村民税の超過課税は、個人ではなく主に法人を対象として課税されており、十分
 な説明もないまま恒久的に課税を実施している自治体もある。課税の公平を欠く安易な課税は行うべき
 でない。
4)法人に対する安易な法定外目的税は課すべきでない
  法定外目的税は、環境対策の観点から導入されているケースも多いが、こうした独自課税の実施に
 あたっては、税の公平性・中立性に反することのないよう配慮するとともに、法人企業に対して安易
 な課税は行うべきではない。
6 その他
1)配当に対する二重課税の排除
  配当については、現行の配当控除制度で法人税と所得税の二重課税の調整が行われているものの不十分
 であり、さらなる見直しを求める。
2)電子申告について
  国税電子申告(eTax)の利用件数は、年々拡大してきているが、
 まだまだ利用率としては不十分であり、その普及に取り組んでいく必要がある。
  さらなる利用促進に向けて、制度の一層の利便性向上を図るとともに、
 地方税の電子申告(eLTAX)との一体化の検討、インセンティブと
 しての法人・個人に対する恒常的な税額控除制度の創設等の税制措置を
 求める。

<平成24年度税制改正に関するスローガン>
・行財政改革を推進するため、議員・公務員定数の大胆な削減を!
・地域経済を担い、新成長の原動力となる中小企業に活力を!
・短期間に大規模かつ大胆な国費投入で復興に全力を!
・所得税は広く薄く負担を求め、基幹税としての役割強化を!
・法人実効税率は欧州・アジア主要国並みの30%以下に引き下げをを!
・適用要件を緩和・是正し、企業の継続に役立つ事業承継税制を!
・消費税率引き上げの前に、徹底した行革により行政のスリム化を!
・地方分権の推進のため、三位一体改革の更なる徹底を!
・年金・医療・介護制度について改革を断行し、持続可能な社会保障制度の確立を!