平成21年度税制改正に関する提言の解説
財団法人全国法人会総連合
はじめに
  全法連では、本年も全国大会に向けて「税制改正に関する提言」をまとめ、発表することになりました。この提言は、各県連の要望事項を集約、税制小委員会で検討の後、税制委員会で取りまとめ作業、理事会での承認という一連の手続きを経て、まとめあげたものです。文字通り「税のオピニオンリーダー」としての法人会の英知を結集し、会員全員の意見を集約したものです。
 わが国の経済社会を取り巻く状況は、厳しさを増しています。今後、活力ある経済社会を構築していくためには、行財政改革、経済構造改革、税制改革に取り組んでいくことが緊急の課題で、是非とも解決しなければいけません。
 世界的な金融不安、原油や食料等の資源の高騰という悪条件を克服し、日本経済を活性化させるためには、今どのような経済運営が必要か、中でも、日本経済の中核的な存在である中小企業が元気を取り戻し、持続的な成長を続けるためには、どのような税制が望ましいのかを中心テーマに据えて、この提言および解説をまとめました。今後、各県連、各単位会の税制改正要望活動に役立てて頂けるように努めました。
 この解説の作成は、税制顧問が担当することになっており、今回は柳島佑吉が担当致します。
総  論
第一 経済社会のあるべき姿
  世界的な金融不安の後、景気後退がやってくるという心配は、現実のものになりました。日本をはじめ世界中どこでも、石油、食料やその他資源価格が上がり、それが製品価格の値上がりとなって、中小企業や家計の負担増を招いています。
 日本では、2002年2月から戦後最長という実感を伴わない景気回復が言われてきました。しかし、それも景気後退局面を迎えたとしますと、低成長下の経済では、懸案の財政再建や格差是正、社会保障問題の解決は、ますます難しいものになります。
 日本では少子高齢化社会が急速に進んでいます。日本人の平均寿命は、女性が85歳、男性が79歳と世界でも有数の長寿国です。その半面、少子化傾向は止まらず、社会的に大きな問題となっています。少子高齢化社会は、支える人と支えられる人のバランス、言い換えますと、受益と負担のバランスを悪化させていきます。例えば、人口構成比率でみますと、2000年には年齢20-64歳の勤労者世代と65歳以上の高齢者の比率が4人対1人であったものが、2025年には、勤労者世代2人に対し、65歳以上の高齢者は1人になります。そうなると、現在の公的サービスを支える勤労者の負担は、年を追う毎に重くなっていきます。ですから、高齢化に必要な年金、医療、介護の費用を社会全体の活力を損なうことなく、どう維持していくかということについては、単に負担面の議論だけでなく、安心できる社会保障制度の構築という制度改革と一体で議論する必要があります。
 さらに、800兆円にも達した財政赤字問題から目をそらすわけにはいきません。政府は2011年度までに基礎的財政収支(国債費を除いた歳出と歳入のバランス)を単年度で黒字化させるという約束をしていましたが、その目標は先送りされる気配です。今後、政府がさらに国債発行という借金を重ねると、日本政府は破局への道を歩むことになります。
 政府支出の無駄を省く歳出削減や中期的かつ具体的な財政改革の目標を国民の前にはっきりと提示するのが責任ある行動と言うべきでしょう。
 ちなみに、財政の現状をみると、国の一般会計予算のうち税収等の割合は全体の65%で、残りの30%は国債発行、5%はその他収入となっています。
第二 行財政改革の推進と歳出削減
  小泉内閣以来の「官から民へ」のスローガンは、言うまでもなく、政府の行っている各種公的サービス、行政の実態を点検し、官民の役割分担を見直すことです。郵政、道路公団の民営化に続いて、政府は行財政改革推進法等関連法の中で、政府系金融機関改革、2010年度までに約33万人の公務員(国の行政機関の職員)の5%削減、特殊法人の整理合理化などを示しています。しかし、こうしたリストラ策は、激しい競争の渦中にある民間業界に比べ、大幅に見劣りします。
 また、一部地方自治体で発覚した裏金づくりなどに見られるように、地方自治体では住民監査が行き届かず、地方行革の遅れが指摘されています。
 なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。政府や地方自治体などの公的機関と呼ばれる組織は、利潤を追求するのではなく、公的な立場から財、サービスを提供するのが基本原則になっています。しかし、利潤という目標や競争もないとすると、多くの弊害が生まれます。まず、経営上の効率性を追求してコストを削減するというインセンティブが働きにくい。また、競争相手がいないので、消費者のニーズが何処にあるかについて自らが動く仕組みになっていない。さらに、公平性を重視するあまりにサービス内容が画一化せざるを得ない、などの点が指摘できると思います。
 以上のような理由から、どうしても官にしかできないものは別にして、民間にできるものは民間に委ねるという発想の転換が必要です。公務員の数を減らすことは、何よりも必要です。同様の観点からすると、国会議員、地方議員の数も多すぎます。
 さらに、国民の側にわかりにくい特別会計(総額412兆円)の存在も問題です。国の予算である一般会計は約80兆円ですから、削減できる余地も相当ありそうです。
 地方自治体の改革では、市町村合併に加えて道州制を導入すると行政面でも重複が省け、お役所のスリム化にもつながるので積極的に検討すべきでしょう。行政改革については、常に納税者が監視していかなければいけません。
 政府は、先の国会で国家公務員制度改革基本法を成立させ、幹部人事の一元管理や官僚の定年を現行の60歳から65歳に引き上げるなどの方策を打ち出すことになっています。しかし、新制度への全面移行は2013年度の予定で効果の方もまだ未知数です。要は役人や行政の無駄をどうカットするかが行革の大きなポイントになることは言うまでもありません。
第三 社会保障制度・国民負担のあり方
  政府の2008年版「高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者は07年10月現在約2,746万人となっています。総人口に占める高齢者の割合(高齢化率)は21.5%となっています。
 このような高齢化社会の進展に伴い、社会保障給付は2006年度の90兆円から2025年度には141兆円まで、引き続き経済の伸びを上回って増大していくことが予想されています。
 平均寿命がさらに延びることによって、高齢化率は2055年には40.5%に達し、05年には現役世代3.3人で高齢者1人を支えていたのに対し、55年には1.3人で1人を支えていくことになります。
 こうした状況の中で現在の制度を維持していくためには、年金の給付水準をもう一段引き下げるか、高齢者も能力に応じて費用負担をしていただく、あるいは現役世代に負担増を求める以外に方策はありません。
 そこで、政府はとりあえず、2009年度から基礎年金の国庫負担割合を従来の3分の1から2分の1に引き上げて、そのための安定財源を確保する方針を決めました。しかし、肝心の安定財源をどのような方法で確保するかについては、まだ決まっていません。当初、あらゆる世代が公平に分かち合う等の観点から消費税を税率アップすることも選択肢とみられていましたが、財源問題については先延ばしされています。
 これでは、将来世代への負担の先送りというツケを残すだけで、国民の将来不安はつのるばかりです。
 国民の立場からみると、肥大化する社会保障費をどこまで負担できるかという観点からの議論も必要でしょう。税と社会保障負担を国民所得で割った額を国民負担率と言います。この国民負担率をみると、米国は約30%なのに対し日本は約40%です。欧州を見てみると、イギリス、ドイツが約50%、フランスが60%、福祉先進国と言われるスウェーデンが約70%になっています。アメリカは社会保険の適用範囲が非常に限られており、日本の場合は、将来の国民負担率は50%程度に抑えることが望ましいと言えるでしょう。
第四 国と地方のあり方

わが国の地方制度は、米国、ドイツ等の連邦国家とは異なるもので、英国、フランス等と同様の単一国家と呼ばれるシステムで運営されています。そしてわが国の自治体の置かれている現状は、理想の地方自治とは程遠い過疎問題、財政赤字に苦しむ姿です。
 なぜ、そうなったかというと、明治以来の中央集権システムは、国・地方の経済発展には大きく貢献してきましたが、ナショナル・ミニマムという目標が達成された現在では、むしろ行政の非効率、無駄が目立ってきました。
 これから地方のやるべき事は、地方分権という大きな流れに沿って、自治体が住民ニーズに沿った行政を展開できるように制度や条件を変えていくことが必要になるでしょう。
 具体的には、国から地方へ、官から民へという観点から仕事のあり方を見直し、その中で財源調整制度や補助金や税源の配分を併せて検討することが課題になってきています。
 地方自治体は、国の総支出の3分の2を消費し、公務員の数も国の3倍もいます。こうした実状からみると、地方自治体のリストラや自治体間の合併や道州制の推進を含めて行政の効率化に対処しなくてはいけません。
 そして、最終的には受益と負担の関係を徹底させ、財源不足が生じれば税負担の増加か歳出カットを行うのが、理想型というものでしょう。
 すでに地域間の財政力格差の是正のため、所得税から住民税へ3兆円の税源移譲や地方税である法人事業税の税率を引き下げることで約2.6兆円が分離され、本年度新たに創設された地方法人特別税(国税)として、一定の基準で地方に譲与されます。
 地方自治体に財源調達能力の地域格差があるのは事実です。これまでにも、国は地方の行政水準維持等の観点から、地方交付税等により、地方行政を実施するために必要な財源保障を行っています。しかし、この地方交付税は財政肥大化を招く原因となり、地方自治体の無駄遣いにもつながっているのも事実です。制度の見直しは是非とも必要です。
 政府の地方分権委員会は、予算規模約11兆円、人員約7万3,000人を地方に移す改革案を年末の第二次勧告に盛り込む予定です。国土交通省の地方整備局等出先機関9つを都道府県に委譲して、事実上廃止するためです。地方にできることは地方に委せ、その代わりに行政もスリム化させることが何よりも重要です。

第五 税制改革のあり方

  税は、国・地方が提供する公的サービスの財源です。税がなくては、政府活動は機能しません。効率性重視の徹底した行財政改革を前提としたうえで、政府活動に必要な税収額を誰が、どの程度、どのように負担していくかを決めるための基本が公平・中立・簡素の三原則です。
 また、現在のように経済のボーダレス化が進むと、国際的整合性も重要になるでしょう。
 しかし、いま課税原則の中で一番に重要視すべきなのは簡素性でしょう。現在の税制は、何度も細かな改正を繰り返して、迷路に入り込んだような状態になり、常識ある国民にも理解できません。
 また、税制を構築するにあたっては、効率化の観点が重要です。効率化とは、簡単に言うと、経済社会の活性化に役立つ税制のことです。特に、地域経済の担い手である中小企業の活性化に焦点をあてた税制の構築が求められます。
 その中でも、具体的には法人税率(中小企業の軽減税率を含む)の引き下げと事業承継税制の確立等が是非とも必要です。

第六 租税教育の充実
  税制改革の項でも述べましたが、ロビンソン・クルーソーのように孤島に一人で生きるのならいざ知らず、人間が集団で社会生活を営むためには、税金が必要不可欠な存在になります。
 福沢諭吉は「国を支えて施しを受ける」と述べましたが、国防、治安などの公共サービス、あるいは道路、橋などの公共物を提供してもらうためには、そのコストを誰かが負担しないと社会生活は成立しません。つまり税とは、国や地方自治体が提供する行政サービスの対価として支払う性質のものです。
 世間では、このような税金をめぐる本質の議論があまり行われていません。税金を払わないで、公共財の提供にタダ乗りしていると、やがて国や地方自治体は破産してしまうことになります。
 納税者のことを英語ではタックス・ペイヤーと言います。その真の意味は「税金をキチンと支払って、その代わりに税金の使い道を厳しく監視する人」のことです。その意味で、社会全体あるいは学校等の教育現場での租税教育を充実させる必要があります。
各  論
第一 法人税制について
1.法人税率の引き下げ
  21世紀は国が企業を選ぶのではなく、企業が国を選ぶ時代と言われています。今や経済活動に国境はなく、企業は地球規模で国際競争を繰り返しています。最近は、経済停滞の続く日本から海外に進出する企業が増えています。そうすると国内産業の空洞化が進み、国内の雇用や設備投資に悪影響を及ぼし、国内の経済活動は不活発になります。また、外国資本が日本への投資を促進させるためにも環境整備を急ぐ必要があります。
 日本の法人税の実効税率は40.69%でアメリカ並みと言われていますが、実は日本が先進諸国の中で法人税率が一番高い国なのです。これでは、日本企業が外に出て行くのも、外国資本が日本国内投資に消極的になるのも当然の事と言えるでしょう。
 欧米諸国では、カナダが2012年までに現在の34%から段階的に25%へ、アメリカも実効税率を7%下げられる案を示しています。ドイツでは2008年から実効税率を38%台から29%台、イギリスでも2008年4月から30%から28%まで下げるなど法人税の引き下げは先進国でも半ば常識化しています。アジア諸国では大体、実効税率が20%台になっています。
 法人税率の引き下げの前提条件としては、不必要な租税特別措置等の廃止で課税ベースを拡大したうえで、欧州、アジア諸国並みの実効税率とする。具体的には法人税率(実効税率)を30%台前半に引き下げる位の思い切った措置が必要です。
2.中小企業軽減税率の引き下げ
  資本金1億円以下の中小企業については、その担税力に配慮して、所定の所得金額について、軽減税率が適用されることになっています。ところが、昭和56年以降、適用対象の所得金額(年800万円)が据え置かれているだけでなく、軽減税率と基本税率(30%)の格差が縮小してきています。これでは、中小企業に対して相対的に課税強化をもたらしているものですから、その是正を求める必要があります。
 具体的には、軽減税率を22%から20%へ引き下げ、適用対象所得を800万円から1,500万円程度に引き上げる必要があると考えます。
3.特殊支配同族会社の役員給与の損金算入制限
 平成18年5月、新会社法が施行され、誰でも簡単に会社設立が可能になりました。具体的には、従来の最低資本金制度が撤廃され、実質的な「1人、1円」会社をつくることができます。こうした規制緩和が、課税逃れの手段として使われるおそれが出てきたため、突然、平成18年度改正に盛り込まれたのが、この措置です。
 これまでは、一般的に同族関係者が株式総数の50%超を保有している会社を同族会社と称していましたが、それに加えて新しく「特殊支配同族会社」という概念が打ち出されました。それは一体どういうものかと言うと、会社のオーナーと同族関係者が発行済株式の90%以上を保有し、経営面でもオーナー(業務主宰役員)および同族関係者が常務役員の過半数を占める会社のことを言います。
 ここで言う常務役員とは、文字通り「常務に従事する役員」のことですが、具体的には、会社の経営に関する業務を日常、継続的に遂行している役員のことで、会計参与や監査役は含まれません。
 こうした会社について、平成18年度から増税措置がとられたのです。その内容は特殊支配同族会社が、その会社の業務を主宰している役員(オーナー社長)に対して支給する給与の額のうち、その業務主宰役員の所得税の計算における給与所得控除相当額は、損金の額に算入しないというものです。
 ただし、この規定は次の事業年度にあっては適用除外が認められます。
 (1) 上記会社の基準所得金額が800万円以下
 (2) 基準所得金額が800万円超3,000万円以下であり、その役員給与額の割合が基準所得金額の
    50%以下の場合
     この制度は節税目的の法人成りを防止しようというねらいで新設されたものですが、一般的に
    個人に認められる給与所得控除を法人段階で否認するのは租税理論を無視したものでありま
    す。多くの中小企業者から反発を買い不評だったために、この規定も若干修正が加えられまし
    た。平成19年度改正で、適用除外基準である基準所得金額が800万円から1,600万円に引き上
    げられました。中小企業の活性化がねらいのようですが、この規定は、元来、公平・中立・簡素と
    いう租税三原則に反するものであり、早急に廃止すべきです。
4.その他
  法人税制で改正すべき事項は、他にも沢山あります。この提言書では、@役員給与取り扱いの見直し、A交際費課税の見直し、B同族会社の留保金課税制度の廃止、C電子申告の活性化―の4項目をあげておきました。
 @については、会社法の改正、企業会計の変更に伴い、税制面でも役員給与の取り扱いが大幅に変わりました。その中で利益連動給与について、同族会社の損金算入が認められていません。そこで一定の条件のもとで、一般会社と同様にこれを認めるよう制度の見直しを求めるものです。Aの制度は、昭和29年に企業の資本蓄積を図る目的で設けられたものです。しかし、現在は企業の消費を促し、景気回復に役立てるという観点から、現行の損金算入限度額の引き上げ等の大幅な見直しが必要となります。Bの制度も昭和29年に設けられたもので、適用対象となる特定同族会社がその所得から配当を行い、法人税を納付した後の内部留保に対し、一定の留保控除を差し引いたうえで残る課税留保金額に一定の税率で法人税を課するものです。1株主グループによる持株割合等が50%を超える会社が適用対象とされていますが、平成18年度改正で資本金が1億円以下の会社については、資金調達の困難さや資本蓄積促進の観点から、適用除外となりました。これで事実上、中小企業はこの制度から外れることになりましたが、課税制度そのものは残っているので、その廃止を求めるものです。Cについては、平成19年度改正で個人について電子申告控除(税額控除)が創設されたものの、依然利用率は低水準にとどまっています。そこで地方税との電子申告との一体化、さらに法人、個人について恒久的な税額控除をしてはどうかという提案です。
 この他、政策目的を達した租税特別措置を廃止する反面、中小企業の技術革新等に役立つ措置の新設、配当の二重課税を防止するため、欧州各国で行われているインピュテーション方式と呼ばれる制度の採用などが重要項目となります。

【参 考】インピュテーション方式
  配当の二重課税を防止するため、株主の所得計算において法人段階で支払った法人税を含めて、個人の
所得税を再計算し、すでに納付した法人税を税額控除する仕組み。

第二 個人所得税制について
1.所得税と住民税のあり方
 所得税および住民税は、国と地方自治体の基幹税なので、国民に広く公平に負担されることが望まれます。しかし、その内容をみると欠陥が多く、基幹税としての地位を低下させてきました。長期的にみると、所得税の税収が減収の一途をたどっています。わが国の所得税は、対国民所得比や、諸外国に比べても負担割合が低く、このため、現在就業者のうち5人に1人は所得税を納めていない「税の空洞化」現象が起きています。最近は就業者統計には現れないフリーターやパラサイト・シングルが増加しているので、実際の非納税者の数はもっと多いかもしれません。他方、高額所得者をねらい打ちにして高率な所得課税を行うと、法人と同様富裕層が海外へ逃げ出すかもしれません。
 平成18年度改正では、地方分権推進の三位一体改革の中で、所得税から住民税(国から地方)への税源移譲(税金の移し替え)が行われ、所得税の税率区分は4段階から6段階に、個人住民税は3段階から一律10%の比例税率となりました。
 今回の国から地方への税源移譲に伴う税率構造の改正で、国の所得税は、各人が担税力に応じて負担する応能税、一方、地方の個人住民税は、行政サービスの対価としての応益税の性格が強まります。特に、地方税は応益原則が一層強くなったのですから、行政サービスへのタダ乗りを防ぐ目的や税負担の歪みを正すという意味で、個人住民税の均等割(市町村民税年額3,000円、道府県民税年額1,000円)の引き上げがさらに必要になるでしょう。
【参 考】
  (1) 所得課税負担率(対国民所得比)の国際比較 (財務省資料)
    日本(2008年度)7.6%、アメリカ(2005年)12.0%、
    イギリス(2005年)13.5%、ドイツ(2005年)10.9%、
    フランス(2005年)10.3%
  (2) 個人住民税の税収(総務省資料)
    平成17年度  78,163億円(均等割 1,974億円、所得割 76,189億円)
    平成18年度 86,291億円(均等割 2,207億円、所得割 84,084億円)
    平成19年度 121,339億円(均等割 2,349億円、所得割118,990億円)
    (注)平成18年度改正で3兆円の税源移譲が行われた。
2.各種控除制度の整理合理化
  所得税には、各種控除制度が設けられており、税制をより一層、複雑なものにしています。現在の所得税制は、戦後のシャウプ勧告により、わが国税制の基幹税としてできあがったものです。その後、大きな経済社会の変化の中で、さまざまな形で改革の手が加えられ、現在に至っています。所得控除は、納税者の家族構成や経済状況など、さまざまな特性を考慮して、担税力の調整を行うために手取りの所得から差し引かれます。そこで、特定の所得控除の額や数が大きくなる程、所得税の課税ベースは狭くなり、税負担の不公平を助長して歪みを発生させます。
 現在、所得控除の数は合計で20を上回ります。シャウプ勧告当時は5ないし6程度でしたから、もう一度税制の原点に立ち還って見直す必要があります。制度創設当時の意義が失われている控除は廃止し、基礎的な人的控除に集約するなど簡素化が必要です。
 この他、最近問題となっているのは、給与所得控除の存在です。給与所得控除とは、資産所得や事業所得と比べて、担税力の小さい給与所得について、何らかの調整が必要という観点から設けられた、わが国独特の制度です。現在の給与所得控除は、年収300万円の場合は108万円、500万円で154万円、1,000万円で220万円が所得控除されます。平均で収入金額の3分の1が所得控除されるのでは余りに手厚すぎると批判の声もあがっています。
 給与所得者が特定の支出をした場合、控除を受けられる特定支出控除の拡大と併せて、給与所得控除のあり方を再検討する必要があるでしょう。
 昭和62年の税制の抜本改革の中では、給与所得控除について「勤務に伴って支出する費用を概算的に控除することのほか、他の所得との負担の調整を図ることを主眼として設けられる」と記されています。しかし、就業者に占めるサラリーマンの割合が80%程度になっている現在、「他の所得との調整」という観点が妥当かどうか、大いに疑問があります。給与に比例して、控除額が拡大する部分については、縮小の方向で見直す必要があるでしょう。
【参 考】
  (1)人的控除
   イ.基礎的な人的控除
    基礎控除 38万円  配偶者控除 38万円  扶養控除 38万円
   ロ.特別な人的控除
    障害者控除 27万円  寡婦(夫)控除 27万円  勤労学生控除 27万円
   ハ.控除の加算、割増
    (配偶者控除) 老人控除対象配偶者 48万円
              同居特別障害者加算 +35万円
    (扶養控除)  特定扶養親族 63万円  老人扶養親族 48万円
             同居老親等加算 +10万円  同居特別障害者加算 +35万円
    (障害者控除) 特別障害者 40万円
    (寡婦控除)  特別寡婦加算 +8万円
  (2)その他の所得控除
   雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、
   生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除
【参 考】N分N乗方式
  課税単位を家族単位とし、家族の所得を家族の人員で分割し、その分割後の所得に累進税率を適用し、その税額を合計します。子どもが多いほど税率が低くなり、税負担が軽くなります。これを有効にするには、累進税率の刻みを工夫する必要があります。
4.金融所得一体課税
  金融ビッグバンの進展で、個人のネットによる証券取引の普及や金融先物、デリバティブ等の金融商品の売買が活発に行われています。金融ビッグバンのキャッチフレーズは、フリー(自由)、フェア(公正)、グローバル(地球規模)ですが、税制面でみると、現行の金融関連税制は、こうした目まぐるしい環境変化に対応できていません。
 その意味で、金融取引、商品について差別をつけずに総合的に課税するという金融一体課税は是非とも必要です。
 現在の所得税制では、所得の発生形態によって10種類の所得分類を行っています。
 金融一体課税を実行するためには、この所得10分類をまず整理統合する必要があります。そのほか、金融所得間の損益通算や課税繰り延べの問題も検討しなくてはいけません。
 イギリスやアメリカ等の例をみても分かる通り、金融取引の活発化が経済活性化の原動力になっています。
 その意味で、わが国でも、金融所得を他の所得と分離して課税する金融一体課税制度は早期に実現すべきです。
5.納税者番号制度
  最近、わたくしたちの生活の中で各種カードが普及し、これに伴ってカード番号の利用が一般的になってきています。情報化、電子化進展も加速した結果、国民一人一人への番号付与が国による管理につながるという抵抗感は以前に比べて薄れているものと考えられます。
 現在わが国では、金融所得一体課税の検討にあたり、預貯金の利子や株式の配当を株式の売却損等で損益通算する際に納税者が自分の意志で選択する「選択制番号制度」について議論が進んでいるほか、電子商取引や金融取引等、いわゆる「足の速い所得」の捕捉手段、あるいは年金等の個人情報を管理する社会保障番号制度との一元管理を見込んで、この問題に対する関心が急速に高まっています。
 納税者番号制度が定着しているアメリカの例をみると、第二次大戦前に導入された社会保障番号が、その後納税者番号として利用されるようになり、現在はこの番号が銀行口座の開設、運転免許の取得等、生活のあらゆる場面で一般的に使用されています。
 納税者番号制度の導入によって課税の公平や適正化が図られることになれば、税制全体に対する国民の信頼向上につながることになります。半面、制度の創設、維持にかかるコスト面の問題や税務情報の流出といった個人のプライバシー保護のための法整備、資金シフト等経済取引に対する影響等も充分に考慮しなければいけません。
 以上のような点をクリアーできる前提条件が整ったら検討すべきであると考えます。
第三 相続税制について
1.相続税
  相続税は性格がわかりにくい税制です。なぜ、相続税をかけるのかという課税の根拠としては、第一には死亡した人の所得税の清算という理由があります。生前に所得税を完全に課税することは困難で、特に資産の含み益には課税できないため、死亡時に相続税で補完するという考え方です。第二は相続した人への所得税という趣旨があります。第三に富が集中することのないように相続税をかけて資産の再配分をするという趣旨があります。
 さらに相続税のかけ方には、1.遺産の額で税を計算する遺産課税方式と2.各相続人が得た財産の額で税を計算する遺産取得課税方式があります。アメリカ、イギリスでは1、ドイツ、フランスは2の方式を採用しています。日本の場合はどうかというと、まず相続人が法定相続分どおりに遺産を取得したとして全体の相続額を計算し、それを実際の取得額に応じて按分するという2の変形方式を採用しています。
 しかし、平成20年度の改正で新しい事業承継税制の創設が決まり、現行方式のままで後継者に優遇措置を講じると、後継者以外の相続税も軽減されてしまうという問題が指摘され、相続税の課税方式を2の遺産取得課税方式に改めることが明記されました。
 遺産取得課税は個人単位課税になりますが、すでに現在の相続税制でも各納税義務者の課税価格の計算は、それぞれの取得財産の価格を元に個別に行うことになっており、課税価格の計算については、特別の違和感はありません。
 しかし、一人当たりの基礎控除がいくらになるか、あるいは税率構造、非課税・軽減措置など具体的な措置については、どうなるか全く見当がつきません。しかも、政府税制調査会の一部委員からは、格差是正のため、相続税強化の声もあがっており、前途は楽観できない情勢です。
 一方、世界的な傾向をみると、相続税はどの国でも税収は大きくなく、また近年では廃止する国も現れています。日本の相続税負担率は欧米主要国とほぼ同じ水準で、これ以上課税強化する理由は見当たりません。また相続税は、中小企業の事業承継とも密接な関連があるので、充分な配慮が必要です。

2.相続時精算課税制度の拡充
  この制度は、中小企業者の事業承継対策として有効に活用されています。平成19年度改正では、新しく取引相場のない株式に係る特例が創設され、60歳以上の親から株式等の贈与を受ける場合、従来の非課税枠2,500万円に500万円を上乗せされ、合計3,000万円となりました。贈与者の年齢制限も65歳から60歳へ引き下げられました。
 ただし、今回の措置では受贈者の条件が厳しく、年齢が20歳以上であるのは当然のことですが、選択年の翌年の3月15日から4年を経過した日までに、受贈者がその法人の代表者であること、法人の発行済株式総数の50%超、議決権の50%超を持つことなどが必要になります。
 つまり、この新制度を利用すると、約5年以内に受贈者に完全に経営権を与えなくてはならないことになります。非課税枠の拡大と併せて、より柔軟な制度運用を望みます。

第四 事業承継税制について
  わが国では、事業承継税制について欧米のような体系的な仕組みは存在しません。一般的な相続税体系の中で、取引相場のない株式等について相続税価格の減額措置や小規模宅地の減額特例がある程度です。平成18年度改正で物納要件の緩和、平成19年度改正で相続時精算課税の特例などの追加措置がとられましたが、中小企業の円滑な事業承継のためには、まだ不充分です。
 総務省の調査によると、近年、全国の事業所や企業数は減少の一途をたどっています。特に最近は、地方経済の不振が盛んに言われ、政治問題にもなっています。地方では伝統的な産業の衰退が言われ、相続税負担による事業承継の困難性がその一因とも言われています。もし、相続税が原因で事業承継ができないとすると、地域経済はもとより日本経済にとっても大きなマイナス要因となります。
 ところが、欧米諸国に目を転じると、事業を相続する場合、事業用資産を一般財産と切り離して、非課税措置や大幅な控除など、課税軽減のための特例措置が設けられています。こうした状況から法人会では、事業承継税制について、欧米並みの本格的な制度の確立を求めてきたところです。
 そこで、政府の方もようやく重い腰を上げ、平成20年度税制改正において事業の後継者を対象にした「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」が創設されることが明記され、具体的には「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」の制定を踏まえ、平成21年度税制改正で創設されることになりました。21年度税制改正での実現ですが、実際は円滑法の施行日(平成20年10月1日)以後の相続にさかのぼって適用される予定です。
 この制度は、中小企業について、一定要件を満たした場合、株式の課税価額の80%に対応する相続税の納税が猶予される仕組みです。一読すると、かなり結構な制度のようですが、実際に適用を受けるまでは適用条件にかなり多くの制約が設けられています。
 まず、制度の概要から説明しましょう。具体的な内容は、「事業を承継する相続人が非上場会社を経営していた被相続人(先代)から相続などによりその株式を収得し、5年間の事業承継といった一定の要件を満たした場合は、その相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した株式等(相続開始前からすでに保有していた議決権株式等を含めて、その会社の発行済議決権株式等の3分の2に達するまでの部分)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税を猶予する」というものです。
 簡単に言うと、ある一定の条件のもとで、事業相続者について自社株の3分の2を限度として課税価格の80%に対応する相続税を納税猶予する制度であります。相続する発行自社株式の3分の2までの部分が80%減額されて課税されるのだから、中小企業の後継者にとっては、まさに善政だと思われる向きも多いかもしれません。
 しかし、注意すべき点も多いのです。この仕組みはあくまで納税猶予であって、欧米諸国のような減税の制度ではありません。当初、この制度は減税制度として検討されていましたが、事業チェックが必要との観点から納税猶予に変わりました。
 つまり、事業相続人は、相続した株式を担保として国に差し出し、死ぬまで会社を同一条件に保つことで、納税猶予(相続税相当分が免除)となるのです。
 次に適用条件について述べます。その要件は、@対象となる企業が中小企業基本法で定める中小企業であること、A相続人は同族関係者と合わせて発行株式の過半数を保有し、さらに同族内で筆頭株主であること、B5年間は雇用の8割を維持しなくてはいけない、C株式は実質的には処分できない―などとなっています。
 以上の要件は、中小企業側からみると問題点が非常に多いのです。まず、@の中小企業の定義が、小売業で資本金5,000万円以下または従業員50人以下、サービス業で同5,000万円以下または同100人以下等、実情に合ったものとは言えません。Aの要件下では、兄弟会社の場合は、後継者が一人と想定されているので、仮に筆頭株主が二人いる場合は誰か一人を選任する必要があります。Bの雇用の8割以上を維持する場合の従業員は、パートや非正規社員はダメで、健保や厚生年金加入者がベースとなります。Cは申告の際、納税猶予分の株式を担保として国に提供するので、処分は実質的に不可能になります。このほか、事業に無関係な資産管理会社が除外されるのは当然だとしても、総資産に占める「特定資産」(有価証券、不動産、現預金、ゴルフ会員権、貴金属など)の合計額が70%以上の会社(資産保有型会社)も除外されます。つまり、第三者相手に貸ビル業やマンション等貸家業を営む場合も対象外になります。さらに、途中で組織再編を行った時にも、認定を取り消されるケースが出てきます。
 ちなみに、欧米では、フランスが相続後5年以上の事業継続を条件に事業用資産の相続税を一律75%軽減、ドイツは相続後5年間の維持保有を条件に22.5万ユーロ控除後、一律35%軽減、イギリスでは非上場会社株式や個人事業主の事業用土地を100%軽減し、さらに会社が事業用に使っている個人所有の土地、建物、機械設備を50%軽減、アメリカは2007年時点で遺産税本体の基礎控除200万ドルの軽減措置をとる―などの優遇措置をとっています。
 こうした欧米の事情をみると、日本が近く実施予定の「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」を柱とする事業承継税制は、制約条件が多く、不満が残ります。とても、中小企業の事業承継を意識した手厚い税制とは言えないでしょう。法人会としては、今後も欧米並みの本格的な事業承継税制の確立を求めていきます。
【参 考】中小企業基本法で定める中小企業
 (業種)          (資本金)        または    (従業員)
 製造業その他     3億円以下               300人以下
 卸売業          1億円以下               100人以下
 サービス業       5,000万円以下           100人以下
 小売業          5,000万円以下            50人以下
第五 消費税制について
1.消費税率引き上げの条件
  わが国の800兆円にもおよぶ財政赤字や少子高齢化社会の到来に伴う社会保障支出の増加などを考えると、将来的には、財源調達のための手段として消費税率の引き上げはやむを得ないものだろうと考えます。しかし、そのための前提条件として国および地方に通じる徹底した行財政改革が必要になります。行政の簡素化、効率化を徹底して行い、その結果、財源がどうしても足りなくなる場合、あくまで最後の手段として消費税率アップもやむを得ないということです。
 政府には、民間にできるものは民間に委ねるという精神のもと、真に国民が必要な行政サービスを最小の費用で提供していくという心構えが是非とも必要です。
 現在の政府の行動から判断すると、消費税を福祉目的税にすることは、安易な歳出増を容認し、財政の肥大化、硬直化を招く要因となるので賛成できません。国民のうち多くの人たちは「福祉の充実のためなら、消費税率アップも仕方がない」と考えがちです。それならば、社会保障費と消費税の関連付けを明確にする説明がなされるべきでしょう。
  また、仮に消費税率を引き上げる場合には、景気や経済に与えるインパクトを考慮して、段階的に引き上げることが望ましいでしょう。
2.仕入税額控除の適正化
  消費税の益税というと、世間では中小企業ばかりがヤリ玉にあげられました。しかし、大企業でも課税売上げ割合が95%以上の場合に仕入税額の全額控除が認められています。事務処理が確立されている大企業については、この適用を不適用とすべきでしょう。
3.滞納防止
  消費税は、言うまでもなく最終的には消費者が負担する税金で、事業者にとって消費税は預り金の性格を持っています。そこで、滞納防止策として、中間申告やe−Taxの普及等執行面でより一層充実した対策をしなくてはいけません。
第六 地方税制の見直しについて
1.固定資産税の軽減
  固定資産税の土地の評価については、平成6年度に公示価格の7割評価にしたところから、全国的に見て地価の下落傾向が続いたのにもかかわらず、税負担が増加するという不合理な状態が続いています。平成19年1月時点の公示価格は、全国平均で前年比0.4%増と16年ぶりに上昇に転じ、20年度も1.7%増となりました。しかし、地方全体は下落しており、全体的なすう勢は変わりません。
 土地の公示価格(時価)に対する固定資産税額1.4%の割合を示す実効税率は、商業地でみると、平成2年度の0.18から平成13年度には0.6%に上昇しました。現在の負担調整が完了して、7割評価が完全に実施されると0.98%まで上昇することになります。商業地においては、この固定資産税のほかに原則として都市計画税(税率0.3%)が課税されるので、税負担感は一層強まるわけです。
 このため、土地評価については、利用価値に着目した収益還元方式に基づいて評価するように求めます。また、小規模事業用宅地については、居住用宅地に設けられている軽減措置(6分の1または3分の1評価)に準じた措置を設ける必要があることを求めるものです。
 また、家屋の評価については、総務省は客観的な時価(処分価値)で評価するとしていますが、実際には処分価値がマイナスになっている中古家屋についても固定資産税が課せられています。そこで居住用については、家屋の経過年数を考慮した評価方法に改めるとともに、事業用については、土地とともに収益還元価格で評価するなどの工夫が必要になります。
 固定資産税の評価体系は極めて複雑であり、一般の人には分かりにくい仕組みになっています。行政の透明化および行政コスト削減の観点から、現在、国土交通省、総務省、国税庁が個別に行っている評価体制の一元化が必要です。
【参 考】収益還元価格
  収益還元方式とは、1つまたは複数の手法を利用して不動産が生み出すと期待される将来の収益を現在価値に置きかえて、不動産価値を求める方法のことを言います。ここでの「還元」とは収益を査定価値に置き換える過程を示します。こうした方法で導き出された価格が収益還元価格になります。
2.事業所税の廃止
 事業所税については、その課税対象が固定資産税と同じで、二重課税的な性格を持っています。また人口30万人以上の都市が課税対象になるので、市町村合併が行われた結果、思わぬうちに課税対象になることがあります。これでは、行財政改革の趣旨に反することになります。
3.申告納税制度の合理化
  最近の地方税制では、地方の独自性を強調する意味で、法定外目的税や事業税の外形標準課税への移行等が行われ、それに伴って地方税の課税、徴収も地方独自に行う事例が多く見受けられます。例えば、事業税については、これまで法人税処理に連動していたので、独自の税務調査は必要としていませんでした。しかし、外形標準課税では独自の税務調査が必要になります。
 このようなことは行政効率の点からみるとマイナスに作用し、企業の納税コストも高めることになります。現在、国税と地方税の課税対象を同じくする中小法人の事業税、法人・個人の道府県民税と市町村民税については、申告納税を一体化して、徴税で納税コストを合理化する必要があります。
 このような執行体制は、すでに消費税と地方消費税について採用されているので、他の税目についても同様の措置をとる必要があります。
第七 環境税制について
  環境問題は21世紀の人類共通の課題であり、温暖化ガスの排出削減を義務づけた京都議定書等、各分野でさまざまな議論が行われています。通常の税の目的が公共サービスの財源確保にあり、公平・中立・簡素が大原則であるのに対して、環境税のユニークな点は、環境汚染物資に直接課税することにより、負荷を負わすことを目的としています。したがって、税制の設計に当たっては、いかに効率よく、公平に負荷するのかという観点が重要になります。
 具体的には個人の消費活動・企業の生産活動が自然環境、居住環境等に悪影響を及ぼす場合、それにより生じるコストを製品価格に反映させることで、適正な経済負担を求めるという考え方があります。
 現在までのところ、わが国では、環境税導入に向けた議論とエネルギー関係諸税である道路特定財源を見直す議論が進められています。しかし、まだその方向性は固まらず、結論は出ていません。環境税については、従来の税制とは考え方が相当異なるので、内外の議論の進展を注視しながら、合意形成に向けての検討が必要になります。