平成20年度 税制改正に関する提言 解説
財団法人全国法人会総連合
総 論
  現在、日本経済は不況という長いトンネルを抜けて、回復過程にあります。今回の景気回復は、各種の経済指標から判断すると、第二次大戦後最長と言われていますが、回復の実感に乏しいというのが、多くの人たちの意見でしょう。景気回復の恩恵は、正直なところ中小企業にはまだ届いていませんし、景気回復に地域間格差などがあり、喜べる状態ではありません。
 一方で、わが国は人生80年という世界一の長寿国となり、同時に少子化が急速に進んで、世界に類例のない少子高齢社会に突入しています。老齢人口が増え、勤労者世代人口が減っていくため、各種公的サービスを支える勤労者世代の負担は、現在の制度を前提とする限り、どうしても増大していかざるを得ません。経済社会の活力を今後、どのように維持、向上させていくかが、大きな課題となります。これに加えて、800兆円に累増した財政赤字の解消も大きな問題点として浮かび上がっています。
 日本の財政は、先進国中最悪の危機的状態となっており、現在の財政赤字の構造のままでは、今後の経済社会の構造変化に対し迅速に対応することはできません。
 納税者の視点から、政府がまずやるべきことは国、地方を通じた徹底した行財政改革であることは論を待ちません。もはや「総論賛成、各論反対」の無責任な議論は通用しません。まず、行政の効率化、簡素化を徹底して行い、公的サービスを改善して、小さな政府を目指す政策を優先して行うべきです。
第一 経済社会の今後のあるべき姿
  今回の景気回復は、期間は戦後最長と言われますが、個人や中小企業には余りピンとは来ません。その理由は、経済成長率が低いうえに、設備投資や輸出等が景気を引っ張っている反面、消費は低水準で、家計消費や中小企業には直接結びついていないからです。企業は国際競争で勝つために、リストラや人件費で抑制をしてきたため、今回の景気回復局面で、雇用者所得は0.3%しか伸びていません。そのうえに、今後の財政、社会保障に対する不安感、閉塞感が重くのしかかっているので、先行き明るい展望が開けないのが実情なのです。
 そうかといって、公共事業や補助金のバラまきによる景気刺激策では、財政赤字を増やし、構造改革を逆戻りさせるだけです。
 いま政府にできることは、国民の前に改革行程の図式をはっきりと示して、安心感を与えることが重要でしょう。
 その第一が、国、地方合わせて800兆円を越える財政赤字をどう減らしていくかという点です。政府は既に、今後の経済運営の指針となる「骨太の方針2006」の中で基礎的財政収支を黒字化させることを約束しています。基礎的財政収支の黒字化とは、行政サービスの経費をその年の税収や税外収入でまかなえることをいいます。現状は、政府の一般会計予算のうち、財源となる税収等の割合は約65%で、残りの約30%は国債発行という借金でまかなっています。
 ですから、国の予算を借金依存体質から脱却するためには、まずは歳出削減を思い切って進める以外に方策はありません。国の試算では、2007年度から2011年度の5年間で総額14.3兆円程度の削減が必要だとしています。全体的な財源不足額は16.5兆円程度と見込んでいるので、残りは増税などの増収策で穴埋めをすることになります。
 さらに、具体的にどの項目を削減するかについては、社会保障、公共事業、地方財政等に大まかな削減目標値が示されただけで、どの程度まで実現するかは不透明です。
 効率的な財政構造の実現という観点からみると、改革は、ようやくスタート地点に立ったのに過ぎません。真の改革のためには有言実行が不可欠です。そのためには具体的なプログラムや工程表を提示して、国民の理解を得るべきです。「良薬は口に苦し」といわれますが、甘言ばかりでは、国民の不安はつのるばかりです。
第二 行財政改革の推進と歳出削減
  行財政改革を大胆に進めるためには、現在の行政の実態を点検し、官民の役割分担を見直すことが重要です。それにより、政府の活動をスリム化するとともに政府の活動を最大限効率化することが求められます。
 昨年5月に成立した行財政改革推進法の中には、政府系金融機関改革、2010年度までに約33万人の公務員の5%削減、特殊法人の整理合理化などが示されています。しかし、このようなリストラ策だけでは、民間業界に比べ大幅に見劣りします。
 また、一部地方自治体における裏金づくりなどに見られるように、国以上に地方自治体に対しては、住民監査が行き届かず、地方行革が著しく遅れている事実が指摘されています。地方では民間より地方公務員の給与水準が高いことも問題となっています。市町村合併で地方議員、地方公務員の数は増えています。
 また、公務員の数を削減するためには、民間にできるものは民間に委ねる、という発想の転換が必要です。今後は競争によるコストの削減や市場原則、自己責任原則の確立が必要な分野を民間に移管していくことが必要でしょう。
 さらに、国民にわかりにくい特別会計(総額412兆円)の存在にも行革の観点からメスを入れ、行政の無駄をなくすべきです。行政の効率性確保のためには、公的サービスの便益がそのコストと見合うものであるか、常に納税者の立場から監視していかなければいけません。これが行財政改革の原点です。
【参考】公務員数の全体造
      国家公務員 94.6万人(国61.3万人、日本郵政公社26.2万人、独立行政法人6.9万
                      人)
      国の内訳=行政機関33.1万人、自衛官25.1万人、国会・裁判所等3.2万人
      地方公務員 304.3万人(一般行政部門104.9万人、教育部門114万人、警察部門2
                       7.4万人、消防部門15.6万人、公営企業等会計部門42.4万
                       人)
注1 国家公務員のうち、行政機関、自衛官、国会・裁判所等は、平成18年度末の定員
注2 地方公務員は、平成17年4月の職員数
三 社会保障制度・国民負担のあり方
  一般に社会保障制度といってもその範囲は広く、(1) 生活保護のように国が生活に困っている人に対し、最低限度の生活を保障する公的扶助、(2) 児童、母子、老人、障害者等に対して一定の財・人的サービスを提供する社会福祉、(3) 社会保険や年金保険、介護保険のように、加入者が保険料を負担して、給付が行われる社会保険、(4) 結核予防、栄養改善等の公衆衛生の4部門から成り立っています。
 高齢化社会の進展に伴い、社会保障の給付は大きく増大しており、厚生労働省の見通しによると、2006年度(平成18年度)の89.8兆円から20年後の2025年度(平成37年度)には141兆円に増大することが予想されています。そこで、現在の制度を続けていくためには、年金等の給付水準をもう一段引き下げるか、高齢者も能力に応じて費用負担に参加していただく、あるいは現役世代に負担増をお願いする以外に方策はなくなります。
 そこで、政府は取りあえず、2009年度から基礎年金の国庫負担割合を従来の3分の1から2分の1に引き上げて、そのための安定財源を確保する方針を決めました。しかし、肝心の安定財源をどのような方法で確保するかは、決まっていません。広く、薄く負担するという観点から、当然消費税の税率アップも選択肢の一つですが、財源問題は先延ばしにされています。
 これでは、将来世代への負担の先送りは止まらず、国民の不安感はつのるばかりです。社会保障制度の給付面においては、(1) サービス提供コストの抑制、(2) 自助、公助の役割分担、(3) 世代間の公平の確保等の観点から、絶えざる改革が必要となります。
 国民の立場から見ると、国民の負担能力の観点からの監視も重要でしょう。その場合、将来、税と社会保障負担を合わせた国民負担率は50%以下に抑えることが望まれます。
参 考】
  日本の国民負担率(2007年度)
    国民負担率(39.7%)=租税負担率(25.1%)+社会保障負担率(14.6%)
    潜在的国民負担率(43.2%)=国民負担率+財政赤字対国民所得比
第四 国と地方のあり方
  行財政改革の流れの中で、国と地方の役割分担の見直しや地方分権を進めていくことが大切です。その際重要なのは、国と地方の役割分担をはっきりとさせ、両者の行政事務の重複を排除して、効率化を図ることがポイントとなります。
 平成18年度には、所得税から住民税へ3兆円の税源移譲が行われました。移譲というけれども、見方を変えると、これは住民税の増税です。税制の趣旨からすると、地方自治体の行政に必要な財源は、それぞれの地域社会が負担することが望ましい。その意味から、地方への税源移譲は、地方分権確立への第一歩です。しかし、自治体の破産もあるご時世です。自分たちは増税をしたのだという意識を持って、地方の財政支出の効率化に努める義務があります。
 地方自治体は、国の総支出の3分の2を消費し、公務員の数も国の約3倍もいます。「小さな政府」を目指すためには、地方自治体のリストラが国以上に大きな問題となるのです。
 地方自治体の自らの財源調達能力には地域格差があるのは事実です。そこで、国は租税負担の公平化や一定の行政水準維持の観点から、地方交付税等により、地方行政を実施するための必要な財源保障を行っています。しかし、この地方交付税交付金は、財政の肥大化を招く要因にもなっているので制度の見直しが必要です。
 このほか、地方分権推進のためには、住民の監視機能の強化や都道府県をブ
【参 考】 市町村合併の推進状況(総務省資料)
         平成11年3月31日 3,232
         平成19年3月31日 1,804
第五 税制改革のあり方
  税は、国・地方が提供する公的サービスの財源です。税がなくては、政府活動は機能しません。効率性重視の徹底した行財政改革を前提としたうえで、政府活動に必要な税収額を誰が、どの程度、どのように負担していくかを決めるための基本が公平・中立・簡素の三原則です。
 また、現在のように経済のボーダレス化が進むと、国際的整合性も重要になるでしょう。
 しかし、いま課税原則の中で一番に重要視すべきなのは簡素性でしょう。現在の税制は、何度も細かな改正を繰り返して、迷路に入り込んだような状態になり、常識ある国民にも理解できません。
 また、税制を構築するにあたっては、効率化の観点が重要です。効率化とは、簡単にいうと、経済社会の活性化に役立つ税制のことです。特に、地域経済の担い手である中小企業の活性化に焦点をあてた税制の構築が求められます。
 その中でも、具体的には法人税率(中小企業の軽減税率を含む)の引き下げと事業承継税制の確立等がぜひとも必要です。
第六 租税教育の充実
  税制改革の項でも述べましたが、ロビンソン・クルーソーのように孤島に一人で生きるのならいざ知らず、人間が集団で社会生活を営むためには、税金が必要不可欠な存在になりま
す。

 福沢諭吉は「国を支えて施しを受ける」と述べましたが、国防、治安などの公共サービス、あるいは道路、橋などの公共物を提供してもらうためには、そのコストを誰かが負担しないと社会生活は成立しません。つまり税とは、国や地方自治体が提供する行政サービスの対価として支払う性質のものです。
 世間では、このような税金をめぐる本質の議論があまり行われていません。税金を払わないで、公共財の提供にタダ乗りしていると、やがて国や地方自治体は破産してしまうことになります。
 納税者のことを英語ではタックス・ペイヤーといいます。その真の意味は「税金をキチンと支払って、その代わりに税金の使い道を厳しく監視する人」のことです。その意味で、社会全体あるいは学校等の教育現場での租税教育を充実させる必要があります。
各 論
第一 法人税制について
 法人税基本税率の引き下げ
  経済の国際化の進展で、経済活動における国境の意味は薄れ、企業は地球規模で活動し、国際競争は一層激化しています。こうしたグローバル化の時代を迎えると、わが国企業の活力および国際競争力を確保するため、法人税率を引き下げ、法人の実質負担を軽減すべきだという議論が出てくるのは当然のことです。近年、我が国の法人税率は引き下げが行われたものの、日本の競争相手として登場したアジア諸国をはじめEU諸国と比較すると、依然高水準を保っています。また、イギリス、フランス、ドイツは競争力強化の観点から、来年以降、法人税率のもう一段の引き下げに踏み切る見込みです。
 日本の法人税が高い理由として、事業税や住民税のような地方税負担が高いことが指摘されており、国、地方を合計した実効税率についても、諸外国と比較してバランスを取る必要があります。
 日本企業と外国企業との競争条件の整備、あるいは外国企業の日本への投資を促進するためにも、わが国の法人税率の引き下げは必要不可欠な要素です。
2 中小企業軽減税率の引き下げ
  資本金1億円以下の中小企業については、その担税力に配慮して、所定の所得金額について、軽減税率が適用されることになっています。ところが、昭和56年以降、適用対象の所得金額(年800万円)が据え置かれているだけでなく、軽減税率と基本税率の格差が縮小してきています。これでは、中小企業に対して相対的に課税強化をもたらしているものですから、その是正を求める必要があります。
 具体的には、軽減税率を22%から20%程度へ引き下げ、適用対象所得を800万円から1,500万円程度に引き上げる必要があると考えます。
3 減価償却制度の見直し
  減価償却制度とは、生産設備の取得費用について、企業が決算期ごとに法定耐用年数に応じて定額か定率で損金に算入できる仕組みのことをいいます。つまり、減価償却制度の拡充で損金扱いできる費用がふえると、課税額を圧縮し、税負担を減らすことが可能になるわけです。
 この制度については、平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産については、これまでの償却可能限度額(取得価額の95%相当額)および残存価額が廃止され、耐用年数経過時点に1円(備忘価格)まで償却ができることになりました。また、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産については、償却可能限度額まで償却した事業年度等の翌事業年度から5年間で1円まで均等償却ができることになります。
 つまり、この制度そのものは大幅に改善され、従来に比べて使いやすいコスト・リカバリー・システムとなりました。
 しかし、まだ改善すべき点が残っています。機械設備の法定耐用年数が欧米に比べて長いうえ、資産区分が複雑で分かりにくいのです。平成19年度改正では、フラットパネルディスプレイ等の法定耐用年数が、従来の10年から5年に短縮されました。機械設備等全般について、大幅な見直しが求められます。
4 特殊支配同族会社の役員給与の損金算入制限
  平成18年5月、新会社法が施行され、誰でも簡単に会社設立が可能になりました。具体的には、従来の最低資本金制度が撤廃され実質的な「一人、一円」会社をつくることができます。こうした規制緩和が、課税逃れの手段として使われるおそれが出てきたため、突然、平成18年度改正に盛り込まれたのが、この措置です。
 これまでは、一般的に同族関係者が株式総数の50%超を保有している会社を同族会社と称していましたが、それに加えて新しく「特殊同族会社」という概念が打ち出されました。それは一体どういうものかというと、会社のオーナーと同族関係者が発行済み株式の90%以上を保有し、経営面でもオーナー(業務主宰役員)および同族関係者が常務役員の過半数を占める会社のことをいいます。
 ここで言う常務役員とは、文字通り「常務に従事する役員」のことですが、具体的には、会社の経営に関する業務を日常、継続的に遂行している役員のことで、会計参与や監査役は含まれません。
 こうした会社について、平成18年度から増税措置が取られたのです。その内容は特殊支配同族会社が、その会社の業務を主宰している役員(オーナー社長)に対して支給する給与の額のうち、その業務主宰役員の所得税の計算における給与所得控除相当額は、損金の額に算入しないというものです。
 ただし、この規定は次の事業年度にあっては適用除外が認められます。
 (1)上記会社の基準所得金額が800万円以下
 (2)基準所得金額が800万円超3,000万円以下であり、その役員給与額の割合が基準所得金額の
    50%以下の場合
 この制度は節税目的の法人成りを防止しようというねらいで新設されたものですが、一般的に個人に認められる給与所得控除を法人段階で否認するのは租税理論を無視したものであります。
 多くの中小企業者から反発を買い不評だったために、この規定も若干修正が加えられました。平成19年度改正で、適用除外基準である基準所得金額が800万円から1,600万円に引き上げられました。中小企業の活性化がねらいのようですが、この規定は、元来、公平、中立、簡素という租税三原則に反するものであり、早急に廃止すべきです。
5 非営利法人課税
  わが国の法人税法では、納税義務者の内国法人を1.公共法人、2.公益法人等、3.人格のない社団等、4.協同組合等、5.普通法人の5種類に分類して、課税の対象となる課税所得の範囲について、それぞれ異なる扱いをするとともに法人税額の計算についても異なる税率の運用を定めています。
 非営利法人の中核を占めるのが、公益法人等で、最近のNPO活動の活発化等から、すでに公益法人制度改革が公表され、関連法案が国会で可決されています。
 平成20年度から税制面を含む新制度が施行される予定ですが、今回の制度改正では、一般的な非営利法人制度のほか、厳格な基準のもとで、社会貢献性の高い法人については公益法人の認定制度が新設され、税制上の優遇措置が認められる予定です。もちろん、法人会でもすべての組織で、公益法人を目指すことにしています。
 公益法人等については、各事業年度の所得のうち、収益事業から生じた所得についてのみ法人税が課税(税率は22%)されます。ここでいう収益事業の範囲は、物品販売業、不動産販売業など33種に限定されています。
 これら収益事業33種のあり方、軽減税率、寄附金等について平成20年度を目途に税制面からの見直しが行われる予定です。
 そこで当面は、非営利法人課税については、収益事業から生じた利益を公益事業に支出するみなし寄附金の損金算入限度額(所得金額の20%)の大幅な拡大を求めることにしました。
6 寄附金
  寄附金の損金算入については、いずれの国においても一定の制限のもとで、これを認めることにしています。寄附金は事業の収益に対応する費用とはいえ、すぐこれをそのまま全額損金とする場合は、寄附を行った法人の税額が減少し、結果的に国が寄附金の一部を補助するのと同じことになってしまします。そこで損金算入を特定の公益目的の寄附に限定しているのです。
 わが国においては、国または地方自治体に対する寄附金や公益法人に対する寄附金のうち、公益性が高いものと指定された特定寄附金について全額損金算入できるものとなっています。また、特定公益増進法人や認定特定非営利法人等に対する一般法人からの寄附金については、一般寄附金とは別枠で、さらに一定限度=(資本金の額×0.25+所得金額×2.5%)×1/2=の損金算入が認められています。最近、民間ボランティア等非営利活動への関心が高まっており、今回の公益法人の制度改革に関連して、新たに公益法人に認定された法人等に対する寄附金についての限度額の引き上げを求めるものです。
7 その他
  法人税制で改正すべき事項は、他にも沢山あります。この提言書では、@役員給与取り扱いの見直し、A同族会社の留保金課税制度の廃止、B交際費課税の見直し、C電子申告の活性化―の4項目をあげておきました。
 @については、会社法の改正、企業会計の変更に伴い、税制面でも役員給与の取り扱いが大幅に変わりました。その中で利益連動給与について、同族会社の損金不算入が認められていません。そこで一定の条件のもとで、一般会社と同様にこれを認めるよう制度の見直しを求めるものです。Aについては、昭和29年にこの制度が設けられたもので、適用対象となる特定同族会社がその所得から配当を行い、法人税を納付した後の内部留保に対し、一定の留保控除を差し引いたうえで残る課税留保金額に一定の税率で法人税を課するものです。1株主グループによる持株割合等が50%を超える会社が適用対象とされていますが、平成18年度改正で資本金が1億円以下の会社については、資金調達の困難さや資本蓄積促進の観点から、適用除外となりました。これで事実上、中小企業はこの制度から外れることになりましたが、課税制度そのものは残っているので、その廃止を求めるものです。Bの制度も昭和29年に企業の資本蓄積を図る目的で設けられたものです。しかし、現在は企業の消費を促し、景気回復に役立てるという観点から、現行の損金算入限度額の引き上げ等の大幅な見直しが必要となります。Cについては、平成19年度改正で個人について電子申告控除(税額控除)が創設されたものの、依然利用率は低水準にとどまっています。そこで地方税との電子申告との一体化や法人の税額控除の創設、さらに個人について税額控除を増額してはどうかという提案です。
第二 個人所得税制について
1 所得税と住民税のあり方
  所得税および住民税は、国と地方自治体の基幹税なので、国民に広く公平に負担されることが望まれます。しかし、その内容をみると欠陥が多く、基幹税としての地位を低下させてきました。近年、所得税の税収が減収の一途をたどり、最近の景気回復でやや持ち直し傾向が見られるものの、長期的なすう勢は変わっていません。わが国の所得税は、対国民所得比や、諸外国に比べても負担割合が低く、このため、現在就業者のうち5人に1人は所得税を納めていない「税の空洞化」現象が起きています。最近は就業者統計には現れないフリーターやパラサイト・シングルが増加しているので、実際の非納税者の数はもっと多いかも知れません。他方、高額所得者をねらい打ちにして高率な所得課税を行なうと、法人と同様富裕層が海外へ逃げ出すかもしれません。
 平成18年度改正では、地方分権推進の三位一体改革の中で、所得税から住民税(国から地方)への税源移譲(税金の移し替え)が行われ、所得税の税率区分は4段階から6段階に、個人住民税は3段階から一律10%の比例税率となりました。これでほとんどの人が所得税が平成19年1月から減り、住民税が19年6月から増えますが、これによって、所得税と住民税を合わせた税負担が増えることはありません。
今回の国から地方への税源移譲に伴う税率構造の改正で、国の所得税は、各人が担税力に応じて負担する応能税、一方、地方の個人住民税は、行政サービスの対価としての応益税の性格が強まります。とくに、地方税は応益原則が一層強くなったのですから、行政サービスへのタダ乗りを防ぐ目的や税負担の歪みを正すという意味で、住人住民税の均等割(市町村税年額3,000円、道府県民税年額1,000円)の引き上げがさらに必要になるでしょう。
【参 考】
  (1) 所得課税負担率(対国民所得比)の国際比較 (財務省資料)
    日本(2007年度)7.6%、アメリカ(2004年)10.9%、
    イギリス(2004年)13.1%、ドイツ(2004年)10.6%、
    フランス(2004年)9.9%
  (2) 個人住民税の税収(総務省資料)
    平成17年度  78,163億円(均等割 1,974億円、所得割 76,189億円)
    平成18年度 86,291億円(均等割 2,207億円、所得割 84,084億円)
    平成19年度 121,339億円(均等割 2,349億円、所得割118,990億円)
     (注)平成18年度改正で3兆円の税源移譲が行われた。
2 各種控除制度の整理合理化
  所得税には、各種控除制度が設けられており、税制をより一層、複雑なものにしています。現在の所得税制は、約半世紀ほど前にシャウプ勧告により、わが国税制の基幹税としてできあがったものです。その後、戦後の大きな経済社会の変化の中で、さまざまな形で改革の手が加えられ、現在に至っています。所得控除は、納税者の家族構成や経済状況など、さまざまな特性を考慮して、担税力の調整を行うために手取りの所得から差し引かれます。そこで、特定の所得控除の額、数が大きくなる程、所得税の課税ベースは狭くなり、税負担の不公平を助長して歪みを発生させます。
 現在、所得控除の数は合計で20を上回ります。シャウプ勧告当時は5ないし6程度でしたから、もう一度税制の原点の原点に立ち還って見直す必要があります。制度創設当時の意義が失われている控除は廃止し、基礎的な人的控除に集約するなど簡素化が必要です。
 このほか、最近問題となっているのは、給与所得控除の存在です。給与所得控除とは、資産所得や事業所得と比べて、担税力の小さい給与所得について、なんらかの調整が必要という観点から設けられた、わが国独特の制度です。現在の給与所得控除は、年収300万円の場合は108万円、500万円で154万円、1,000万円で220万円が所得控除されます。平均で収入金額の3分の1が所得控除されるのでは余りに手厚すぎると批判の声もあがっています。
 給与所得者が特定の支出をした場合、控除を受けられる特定支出控除の拡大と合わせて、給与所得控除のあり方を再検討する必要があるでしょう。
 昭和62年の税制の抜本改革の中では、給与所得控除について「勤務に伴って支出する費用を概算的に控除することのほか、他の所得との負担の調整を図ることを主眼として設けられる」と記されています。しかし、就業者に占めるサラリーマンの割合が80%程度になっている現在、「他の所得との調整」という観点が妥当かどうか、大いに疑問があります。給与に比例して、控除額が拡大する部分については、縮小の方向で見直す必要があるでしょう。
 【参 考】
  (1)人的控除
   イ.基礎的な人的控除
    基礎控除 38万円  配偶者控除 38万円
    配偶者特別控除 最高38万円  扶養控除 38万円
   ロ.特別な人的控除
    障害者控除 27万円  寡婦(夫)控除 27万円  勤労学生控除 27万円
   ハ.控除の加算、割増
    (配偶者控除) 老人控除対象配偶者 48万円
              同居特別障害者加算 +35万円
    (扶養控除)  特定扶養親族 63万円  老人扶養親族 48万円
             同居老親等加算 +10万円  同居特別障害者加算 +35万円
    (障害者控除) 特別障害者 40万円
    (寡婦控除)  特別寡婦加算 +8万円
  (2)その他の所得控除
    雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、
    生命保険料控除、損害保険料控除、寄付金控除
3 少子化対策
  日本の将来人口は2005年から減少をはじめ、そのまま推移すると2100年には6,400万人とほぼ半減するといわれています。
 持続的な経済成長を行うためには、労働力の確保は欠かせない要素となります。人口の急激な減少はぜひとも避けなければいけません。
 ことし生まれてくるこどもたちが勤労者世代の仲間入りするのには、20〜25年かかります。その意味で少子化対策は、国をあげて取り組まなくてはいけない緊急の課題です。
 もちろん、少子化対策は、家族のあり方や保育所の充実等、社会政策として行政の果たす役割が第一義的には重要ですが、税制面からの配慮も必要になります。
 具体的には児童に対する税額控除制度の創設やフランスで第二次大戦の人口減少に対処するために導入された課税単位としてN分N乗方式の採用などを積極的に検討すべきでしょう。

【参 考】N分N乗方式
       課税単位を家族単位とし、家族の所得を家族の人員で分割し、その分割後の所得に累進
      税率を適用し、その税額を合計します。子供が多いほど、税率が低くなり、税負担が軽くなり
      ます。これを有効にするには、累進税率の刻みを工夫する必要があります。

4 納税者番号制度
  最近、わたくしたちの生活の中でカードが普及し、これに伴って番号の利用が一般的になってきています。情報化、電子化進展も加速した結果、国民一人一人への番号付与が国による管理につながるという抵抗感は以前に比べて薄れているものと考えられます。
 現在わが国では金融所得一体課税の検討にあたり、預貯金の利子を株式の売却損等で損益通算する際に納税者が、自分の意志で選択する「選択制番号制度」について、議論が進んでいるほか、電子商取引や金融取引等、いわゆる「足の速い所得」の捕捉手段、あるいは医療年金等の個人情報を管理する社会保障番号制度との一元管理を見込んで、この問題に対する関心が急速に高まっています。
 納税者番号制度が定着しているアメリカの例をみると、第二次大戦前に導入された社会保障番号が、その後納税者番号として利用されるようになり、現在はこの番号が銀行口座の開設、運転免許の取得等、生活のあらゆる場面で一般的に使用されています。
 納税者番号制度の導入によって課税の公平や適正化が図られることになれば、税制全体に対する国民の信頼向上につながることになります。半面、制度の創設、維持にかかるコスト面の問題や税務情報の流出といった個人のプライバシー保護のための法整備、資金シフト等経済取引に対する影響等も十分に考慮しなければいけません。
 以上のような点をクリアーできる前提条件が整ったら検討すべきであると考えます。
5 金融所得一体課税
  金融ビッグバンの進展で、個人のネットによる証券取引の普及や金融先物、デリバティブ等の金融商品の売買が活発に行われています。金融ビッグバンのキャッチフレーズは、フリー(自由)、フェア(公正)、グローバル(地球規模)ですが、税制面でみると、現行の金融関連税制は、こうした目まぐるしい環境変化に対応できていません。
 その意味で、金融取引、商品について差別をつけずに総合的に課税するという金融一体課税はぜひとも必要です。
 現在の所得税制では、所得の発生形態によって10種類の所得分類を行っています。
 金融一体課税を実行するためには、この所得10分類をまず整理統合する必要があります。そのほか、金融所得間の損益通算や課税繰り延べの問題も検討しなくてはいけません。
 イギリスやアメリカ等の例を見ても分かる通り、金融取引の活発化が経済活性化の原動力になっています。
 その意味で、わが国でも、金融所得を他の所得と分離して課税する金融一体課税制度は早期に実現すべきです。
【参 考】
  (1) 金融所得一体課税
    スウェーデン等北欧諸国で90年代にかけて導入された税制で、個人の所得を賃金・給与等の
    「勤労所得」 と利子・配当・キャピタルゲイン・不動産所得等の「金融資本所得」との2つに分け
    て、勤労所得については従来の累進税率を課しますが、金融・資本所得は合算して分離し、比
    例税率を課すという税制です。二元的所得税と呼ばれることもあります。
  (2) 日本における金融所得一体課税(政府税調報告書)
   @金融所得への課税は原則として税率20%の分離課税に統一。
   A株式譲渡損益との損益通算の対象に、公社債の譲渡損益、上場株式の配当を追加。将来的
     には預貯金利子との相殺も検討。
   B損益通算を希望する投資家だけに選択性番号制度を導入。
6 寄附金
  寄附金控除については、国または地方公共団体に対する寄附金や特定公益法人などの寄附金で特定のものが控除の対象とされています。NPO法人への支援の観点から平成13年10月から国税庁長官の認定を受けた認定NPO法人についても適用されます。控除額は、その支出した特定寄附金の額のうち、総所得金額等の40%に相当する金額以下の金額について5,000円を超える部分です。
 最近は民間ボランティアや非営利活動への関心が高まっているため、個人の寄附金税制について、法人と同様に配慮を求めるものです。
第三 事業承継税制について
1 事業承継税制の確立
  わが国の事業承継税制については、体系的な税制の仕組みは存在しません。一般的な相続税の体系の中で、取引相場のない株式等について、相続税価格の減額措置や小規模宅地等の減額特例がある程度です。このほか、平成18年度改正では物納要件の緩和、平成19年度改正で相続時精算課税制度の拡充などの措置が取られましたが、円滑な事業承継のためには、これだけではまだ不十分です。
 今回の景気回復の過程では、地域間格差が大きな問題となり、地方経済の不振が政治問題ともなっています。地域経済の担い手である中小企業が、相続税の負担等により事業が承継できなくなるとすると、日本経済全体にとっても大きな損失をあたえます。
 ところで、欧米諸国では、相続の場合、事業用資産を一般財産と切り離して、事業用資産について、非課税措置や大幅な控除などの課税軽減措置が、ごく当たり前に行われています。法人会が専門の調査機関に依頼した報告書では、「各国とも相続税制の体系は多様であっても、事業承継を相続税に優先させるという考え方は共通しており、特例や優遇措置が整備されている。その中で、わが国の税制面における事業承継は限定的なものであり、より包括的に支援が望まれる。」とまとめています。
 ですから、わが国も欧米諸国を見習って制度の確立を急ぐべきです。具体的には、相続時の事業従事を条件に、事業用資産の相続については他の一般財産と切り離して課税し、事業用資産、株式を軽減あるいは控除する欧米と同様の制度を創設すべきです。
 そして、この制度が本格導入されるまでの経過措置として、あくまで暫定的に取引相場のない株式の課税価格の減額率等を大幅に引き上げること、さらにこの措置は小規模宅地価格の特例との一部限定的な併用制になっていますが、それを改めて各々の措置を個別に適用できるよう制度改正することを求めるものです。
2 相続時精算課税制度の拡充

  この制度は、中小企業者の事業承継対策として有効に活用されています。平成19年度改正では、新しく取引相場のない株式に係る特例が創設され、60歳以上の親から株式等の贈与を受ける場合、従来の非課税枠2,500万円に500万円を上乗せされ、合計3,000万円となりました。贈与者の年齢制限も65歳から60歳へ引き下げられました。
 ただし、今回の措置では受贈者の条件が厳しく、年齢が20歳以上であるのは当然のことですが、選択年の翌年の3月15日から4年を経過した日までに、受贈者が、その法人の代表者であること、法人の発行済み株式総数の50%超、議決権の50%超を持つことなどが必要になります。
 つまり、この新制度を利用すると、約5年以内に受贈者に完全に経営権を与えなくてはならないことになります。非課税枠の拡大と合わせて、より柔軟な制度運用をのぞみます。

第四 消費税制について
1 消費税率引き上げの条件
  わが国の800兆円にもおよぶ財政赤字や少子高齢化社会の到来に伴う社会保障支出の増加などを考えると、将来的には、財源調達のための手段として消費税率の引き上げはやむを得ないものだろうと考えます。しかし、そのための前提条件として国および地方に通じる徹底した行財政改革が必要になります。行政の簡素化、効率化を徹底して行い、その結果、財源がどうしても足りなくなる場合、あくまで最後の手段として消費税率アップもやむを得ないということです。
 政府には、民間にできるものは民間に委ねるという精神のもと、真に国民が必要な行政サービスを最小の費用で提供していくという心構えがぜひとも必要です。
 現在の政府の行動から判断すると、消費税を福祉目的税にすることは、安易な歳出増を容認し、財政の肥大化、硬直化をまねく要因となるので賛成できません。国民のうち多くの人たちは「福祉の充実のためなら、消費税率アップも仕方がない」と考えがちです。それならば、社会保障費と消費税の関連付けを明確にする説明がなされるべきでしょう。
 また、仮に消費税率を引き上げる場合には、景気や経済に与えるインパクトを考慮して、段階的に引き上げることが望ましいでしょう。
2 仕入税額控除の適正化
  消費税の益税というと、世間では中小企業ばかりがヤリ玉にあげられました。しかし、大企業でも課税売上げ割合が95%以上の場合に仕入税額の全額控除が認められています。事務処理が確立されている大企業については、この適用を不適用とすべきでしょう。
3 滞納防止
  消費税は、いうまでもなく最終的には消費者が負担する税金で、事業者にとって消費税は預り金の性格を持っています。そこで、滞納防止策として、中間申告やe−Taxの普及等執行面でより一層充実した対策をしなくてはいけません。
第五 地方税制の見直しについて
1 固定資産税の軽減
  固定資産税の土地の評価については、平成6年度に公示価格の7割評価にしたところから、全国的にみて地価の下落傾向が続いたのにもかかわらず、税負担が増加するという不合理な状態が続いています。平成19年1月時点の公示価格は、全国平均で前年比0.4%増と16年ぶりに上昇に転じましたが、地方全体は下落しており、全体的なすう勢は変わりません。
 土地の公示価格(時価)に対する固定資産税額1.4%の割合を示す実効税率は、商業地でみると、平成2年度の0.18から平成13年度には0.6%に上昇しました。現在の負担調整が完了して、7割評価が完全に実施されると0.98%まで上昇することになります。商業地においては、この固定資産税のほかに原則として都市計画税(税率0.3%)が課税されるので、税負担感は一層強まるわけです。
 このため、土地評価については、利用価値に着目した収益還元法にもとづいて評価するように求めます。また小規模事業用宅地については、居住用宅地に設けられている軽減措置(6分の1又は3分の1評価)に準じた措置を設ける必要があることを求めるものです。
 また、家屋の評価については、総務省は客観的な時価(処分価値)で評価するとしていますが、実際には処分価値がマイナスになっている中古家屋についても固定資産税が課せられています。そこで居住用については、家屋の経過年数を考慮した評価方法に改めるとともに、事業用については、土地とともに収益還元価格で評価するなどの工夫が必要になります。
 固定資産税の評価体系は極めて複雑であり、一般の人には分かりにくい仕組みになっています。行政の透明化および行政コスト削減の観点から、現在、国土交通省、総務省、国税庁が個別に行っている評価体制の一元化が必要です。
 【参 考】収益還元価格
       収益還元方式とは、1つまたは複数の手法を利用して不動産が生み出すと期待される将
      来の収益を現在価値に置きかえて、不動産価値を求める方法のことをいいます。ここでの
      「還元」とは収益を査定価値に置き換える過程を示します。こうした方法で導き出された価格
      が収益還元価格になります。
2 事業所税の廃止
  事業所税については、その課税対象が固定資産税と同じで、二重課税的な性格を持っています。また人口30万人以上の都市が課税対象になるので、市町村合併が行われた結果、思わぬうちに課税対象になることがあります。これでは、行財政改革の趣旨に反することになります。
3 超過課税・法定外目的税
  地方分権の確立がうたわれる中で、最近、地方自治体が自主的に課税する市町村民税の超過課税や法定外目的税が多く採用されています。とくに市町村民税の超過課税は個人ではなく、法人を対象にして行われています。こうした課税は、受益と負担の観点から大いに疑問がありますので、安易な課税は避けるべきです。
4 申告納税制度の合理化
  最近の地方税制では、地方の独自性を強調する意味で、法定外目的税や事業税の外形標準課税への移行等が行われ、それに伴って地方税の課税、徴収も地方独自に行う事例が多く見受けられます。例えば、事業税については、これまで法人税処理に連動していたので、独自の税務調査は必要としていませんでした。しかし、外形標準課税では独自の税務調査が必要になります。
 このようなことは行政効率の点からみるとマイナスに作用し、企業の納税コストも高めることになります。現在、国税と地方税の課税対象を同じくする中小法人の事業税、法人・個人の道府県税と市町村民税については、申告納税を一体化して、徴税で納税コストを合理化する必要があります。
 このような執行体制は、すでに消費税と地方消費税について採用されているので、他の税目についても同様の措置を取る必要があります。
第六 環境税制について
  環境問題は21世紀の人類共通の課題であり、温暖化ガスの排出削減を義務づけた京都議定書等、各分野でさまざまな議論が行われています。通常の税の目的が公共サービスの財源確保にあり、公平、中立、簡素が大原則であるのに対して、環境税のユニークな点は、環境汚染物資に直接課税することにより、負荷を負わすことを目的としています。従って、税制の設計に当たっては、いかに効率よく、公平に負荷するのかという観点が重要になります。
 具体的には個人の消費活動・企業の生産活動が自然環境、居住環境等に悪影響をおよぼす場合、それにより生じるコストを製品価格に反映させることで、適正な経済負担を求めるという考え方があります。
 現在までのところ、わが国では、環境税導入に向けた議論とエネルギー関係諸税である道路特定財源を見直す議論が進められています。しかし、まだ、その方向性は固まらず、結論は出ていません。環境税については、従来の税制とは考え方が相当異なるので、内外の議論の進展を注視しながら、合意形成に向けての検討が必要になります。